今月の
特集

2020.6.30

変わるもの、変わらないもの
~学生たちの今~

新型コロナウイルス感染症への対応をめぐり、世の中は、「新しい生活様式」に沿った次のステップへと徐々にシフトしている。

その中で、社会人以上に環境の変化に戸惑い、様々な不安を抱えているのが中高生や大学生ではないだろうか。休校中は膨大な量の課題提出が大変だった、進学や就職のための活動が進まない、アルバイトが無くなり金銭的に苦しい……といった声もよく耳にする。

そんな状況を前向きに捉え、物事をプラスに転じていくには? 学生と彼らを側で支える青年たち一人ひとりにとっての、変わるもの、変わらないもの―。

    1. ■①— 今こそ、苦手なことにもチャレンジ!
      高校2年生のUくんは、慣れない生活に最初は戸惑ったという。「4月は1日だけ、5月も週1回程度の登校日で、それ以外は家から全然出ない毎日。…続きを読む
    2. ■②  — 自分の経験が誰かの役に立つ〜オンライン就職セミナーから
      Kさん(30代・女性)は、同じ地域で一緒に霊友会の活動をする大学生たちとオンラインつどいをする中で、こんな相談をされた。…続きを読む
    3. ■③ —怖がらずに踏み込んだら道が拓けた
      高校教師として、日々、生徒たちと向き合っているT・Y(30代・男性)さん。「教師の行動次第で、生徒の人生が変わる。どこまで生徒に関わっていけるかが大切だと思っています」と話す。…続きを読む

①今こそ、苦手なことにもチャレンジ

高校2年生のUくんは、慣れない生活に最初は戸惑ったという。

「4月は1日だけ、5月も週1回程度の登校日で、それ以外は家から全然出ない毎日。でも学校の課題はやらないといけない。青年部の仲間にも会えない。正直、しんどかったです」。

休校は長引き、学生たちの不安やストレスは日に日に増していった。それでも、Uくんは自分なりにできることを少しずつやってみた。

「一日も早く収束するように、つどいや弥勒山に行けるようにと、青年部の仲間と連絡を取り合って、お経は毎日続けました。そうしたら、気になる仲間や友達の顔が浮かんできて……。そういう人には元気?って連絡するようにしました。

5月、青年部の先輩に手伝ってもらって、中高生のオンライン勉強会を企画しました。同世代の霊友会の仲間と一緒にビデオ通話でみんなを繋いで、現役教師の人に理科の授業をしてもらったり、社会人の人に英語を教わったり。ぼくは元々、電話が得意じゃないのであんまりうまく話せないけど、みんなが楽しんでくれて、元気になってくれて嬉しかった。またやる計画を立てています」。

6月に入り、ようやく学校も再開。引き続き、新しい環境への対応が求められるが、Uくんは前を向いている。

「ぼくは軽音楽部なんですけど、密にならないように部室は予約制で順番に使ったりと、いろんな工夫をしています。秋には楽しみにしている文化祭がある予定。どんなふうに開催すればいいか、みんなでアイデアを出し合っていきたいです。オンラインでの勉強会やつどいで、ぼくは相手に喋ってもらうのがまだまだ苦手だなと感じたので、何でも話してもらえる自分になれるようにチャレンジしていこうと思います」。

※写真はイメージです。本文の登場人物とは関係ありません。

②自分の経験が誰かの役に立つ〜オンライン就職セミナーから

Kさん(30代・女性)は、同じ地域で一緒に霊友会の活動をする大学生たちとオンラインつどいをする中で、こんな相談をされた。

「自粛期間中で就職活動が進まず、不安でいっぱいです。せめて今のうちに、社会人の経験談をたくさん聞かせてもらいたい」。

大学生が直面するコロナ禍の問題を目の当たりにしたKさん。自分の経験が少しでも役に立つならと、オンラインで座談会形式の就職セミナーを開くことにした。
青年部同士の横の繋がりを生かして、保育士、銀行員、システムエンジニアなど、社会人の仲間に講師を頼んだ。スマホで共有できる講師たちの紹介レジュメも作成した。

大学生数人と、高校生も参加した当日。講師たちから、今の仕事を選んだ理由や、実際に働いて感じたことなどが語られた。こんな具体的なやりとりも……。

(大学生):「私は就職活動に必要な自己分析のポイントがよく分からなくて。先輩のアドバイスを聞きたいです」。
(講師の社会人):「ぼくは当時、参考書に沿って一通り自己分析をしたけど、それで自分のことが分かったかと言うと、自信がもてなかった。

それで、書類でも面接でも、実体験に基づいて自分自身をPRしていった。例えば、部活で最初はベンチにも入れなかったけど、人一倍練習してレギュラーになれた経験から、コツコツ持続できるのが長所です、とか。霊友会の活動で学生のリーダーをした経験から、チームを引っ張っていくのは得意です、とか。そうやって自分の体験を生かしていくのもいいんじゃないかな」。

(大学生):「大学の就職センターなどもコロナの影響で止まってしまって頼れるところがなかったので、話を聞けて良かったです。ありがとうございます!」

Kさんは最後に、参加者にこう呼びかけた。

「これからも、学生同士だからこそ、こうやって意見を出し合うことが必要になってくると思う。これから徐々に自粛が緩和されていくけど、自分から何かを掴みにいく。その姿勢が就職活動には大切だと思うから。自分にできることを、お互いにやっていこう!」。

※写真はイメージです。本文の登場人物とは関係ありません。

③怖がらずに踏み込んだら道が拓けた

高校教師として、日々、生徒たちと向き合っているT・Y(30代・男性)さん。「教師の行動次第で、生徒の人生が変わる。どこまで生徒に関わっていけるかが大切だと思っています」と話す。

まさか、そんな気持ちを抱えていたとは…

教師として、生徒たちのために何ができるだろう。そう考えていた昨年、元高校教師の支部の先輩にこんな話を聞きました。「自分が関わっている生徒たちが無事に学校生活を送れるように、将来、人や社会に役立つ大人になるように、毎日の経行の中で一人ひとりの名前を読み上げて念願していた」。

これだ!と思い、直接関わっている約120人の生徒の名前を毎日読み上げて、念願し始めました。そんなとき、卒業したHの顔が頭に浮かんだんです。

Hは明るくて、友だちにも恵まれていて、クラスの担任だった私をよく慕ってくれました。卒業して大学に進学してからも、しばしば私に会いに来てくれていたんです。そんな彼がなぜか気になって、連絡をとりました。

自宅に招き、近況などいろいろ話していると、彼がぽつりと、「生きていても楽しくない。俺なんて死んでもいい」。どういうことなんだと、よくよく話を聞いてみると、両親が兄ばかりをかわいがっていて、自分は家庭の中でのけ者だ。兄のことも嫌いなんだと打ち明けてくれました。

学校ではいつも明るかった彼。まさかそんな気持ちを抱えていたとは……。彼のことが放っておけず、霊友会の教えを 伝え、支部の弥勒山大祭に誘いました。「行ってみます」と快く言ってくれて、一緒に参加することができました。

弥勒山では、同年代の人たちと仲良くなれたようで、「楽しい」と言ってくれました。地元に帰ってからは、週に1度、一緒にお経をあげた後にカレーを食べながら話す「カレーのつどい」を始めました。昨年12月の弥勒山セミナーにはHが友達を誘って参加。Hは積極的に霊友会の活動に取り組むようになりました。

つどいではお互いの近況や毎日お経をあげる中で感じたことを話していたんですが、つどいのたびに、Hがどんどん変わっていくのが分かりました。道で困っている外国人に声をかけて、自分なりにMyおせっかいをしてみたこと。兄に自分から話しかけて、少しだけ会話ができたこと。弥勒山で聞いた話や、お経をあげて感じたことを行動に移したんだと、すごく嬉しそうに話してくれたんです。そして、「自分も親に大切にされてきたことを思い出した。親に感謝しようと思う」と言ってくれました。

先日、彼は自分の誕生日に「生んでくれてありがとう」と手紙をそえて、両親にプレゼントを渡しました。1年前は死んでもいいと言っていた彼が、今は生まれてきて良かったと感じている。親孝行しようとしている。すごく嬉しくなりました。Hのように人知れず悩み、誰かの支えを必要としている人が他にもいるかもしれない。たくさんの人をつどいに誘い、教師としても生徒たちとより深く関わっていこう。Hの姿を見てそう感じました。

どうしてもあきらめてほしくない

Hが友達をつどいに誘ってくれたことで、仲間の輪が広がってきました。教師としても、一人ひとりとどう接すれば相手がいい方向へ進めるのか。毎日の経行で智慧(ちえ)をいただけるように念願をしながら、毎日生徒たちと関わっていきました。

そんな中、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、今年の3月から学校が休校に。生徒と会えない分、受け持っているクラスの生徒たちに電話で連絡をとり、どんな気持ちで毎日過ごしているのか、聞いていきました。友達に会えなくて寂しい。部活の大会を目指して頑張ってきたのに、中止になって悔しい。落ち込んだり、ショックを受けている生徒が少なからずいました。彼らの気持ちを真剣に聞き、励ましていく中で、ある生徒から「部活をやめてバイトをしたい」と相談されたんです。

事情を詳しく聞くと、「本当は部活を続けたいけど、母が病気になって治療費がかかるから、自分が家計を支えたいんです」と話してくれました。部活が大好きで、一生懸命打ち込んできた姿を見てきたので、彼には好きなことを続けてほしい。何とかできないだろうか。そう思い、彼のお母さんとも話をしてみました。彼から聞いた話を伝えると、初めてそのことを知ったようで、「子どもには好きなことをさせてあげたい」と。生徒は母親を気遣うあまり、本当の気持ちを伝えていなかったんです。

どうしてもあきらめてほしくない。そんな思いで、緊急事態宣言の解除後、その生徒と母親に会いに行きました。生徒にお母さんの気持ちを伝え、「それでもお金のことが心配で部活が続けられないのなら、俺が貸すから。自分がやりたいことをあきらめないでくれ」。そう言ってお金を渡そうとしたんです。さすがに受け取ってもらえず、部活の返事も保留のまま帰ることになったのですが……。

つい先日、お母さんから電話がありました。ずっと仲の悪かった自分の母親に初めて頭を下げて、援助を頼んだそうです。「先生がお金を出してくれようとしたときに、子どものためにいつまでも意地を張っていられないと思ったんです」と言ってくれました。生徒は無事、部活に復帰できることになりました。

正直、家庭の事情に立ち入りすぎたかなって考えました。でも、踏み込んだからこそ生徒の問題が解決できた。生徒の母親も、自分の親とのわだかまりを解くことができた。相手のために思いきって行動することの大切さを、あらためて感じました。

学校が再開
これから出来ること

学校が再開して1週間。今のところ何事もなく過ごしている生徒がほとんどです。しかし、長い外出自粛生活から学校生活へと環境が変化したストレスや、部活の大会が中止になったショックで落ち込んだり、学校を休みがちになる生徒がこれから増えるかもしれません。まだまだ油断できないなと思っています。

今こそ、生徒一人ひとりにしっかり目を向け、より積極的に関わっていく時。これからの未来を担う、大切な生徒たちのために、教師としての使命を果たせるよう努力していきます。

※写真はイメージです。本文の登場人物とは関係ありません。 *6 月 6 日に電話で取材しました