③声を掛け続けたからこそ今がある
山田さんと岡さんは小・中学校の同級生で、大親友だ。学校では常に一緒。話し切れないことを手紙に綴り、毎日やりとりもした。そんな充実した日々を送っていた中学校生活最後の年、岡さんに異変が訪れて……。山田さんから岡さんへの、10 年越しの「Myおせっかい」。
※写真左が岡 瑞枝さん(25歳)右が山田理恵子さん(25歳)
岡:中3になって、体調を崩す日が多くなりました。特に原因があるわけでもないのに、次第に休む日が増え、部活を引退した秋には気持ちの糸が切れたように、まったく学校に行けなくなってしまったんです。
山田:元々、優しい性格が災いして友達の間で板挟みになることも多かった岡さん。それに加えて受験のストレス、吹奏楽部のハードな練習などが積もり積もったのかな、と今になっては思えるのですが……。当時は私も受験勉強に追われ、それほど深刻になるまで彼女のことに気付けませんでした。
岡:そんなことないよ! 山田さんは、違うクラスなのに、授業のプリントを毎日家まで届けてくれたんです。その日に習った数学の方程式を、手紙に書いてくれたことも。すごく嬉しかったです。
だけど……。家にいると不安が大きくなる一方で。私だけ立ち止まったまま、友達は着実に階段を登っている。そのギャップを感じ、みんなに会うのが怖くなりました。山田さんに対しても、受験の邪魔をして申し訳ないと感じ、玄関にも出て行けない日が増えていきました。
何もしないのが一番いけないこと
私にできることを見つけよう
山田:私は、何て声をかけたらいいんだろうと悶々としました。それどころか、余計なお世話をして嫌われたらどうしようと考えてしまったんです。
そんな中、岡さんが家に電話をくれました。「鬱になってしまった」と。ショックでした。その後、さらに彼女の気持ちが沈み、「消えたい」と言われたときは泣きました。助けたいのに、力になれていない自分が情けなくて、悔しくて。でも、何もしないのが一番いけないこと。何か私にできることを見つけよう! そのとき、強くそう思ったんです。
卒業した後は別々になったけど、お互いケータイを持ったこともあり、私は、岡さんにメールを送ることを始めました。あまり踏み込んだ内容にすると、返すのが負担になるかもしれない。最初は「元気?」とか当たり障りのない文章を送るので精いっぱいでした。それでも、何とか彼女の気持ちを繋ぎとめたいと必死でした。
岡:何とか高校には進学できたものの、入学早々、休みがちになり、1年で退学。次の年からは通信制の学校に通いました。平日は家にこもってばかりで、週末にレポートを提出しに登校。そんな繰り返しの中、山田さんから届くメールは嬉しかった。不安もありながら、山田さんや友達にまた会いたいと、少しずつ希望を持てるようになっていきました。
山田:「成人式には一緒に出たい」。そう彼女も言ってくれたので、絶対にあきらめないぞと連絡を取り続けたんです。そして、成人式当日―。
岡:山田さんが会場の入り口で迎えてくれ、私の手を引いてくれました。顔を合わせるのは久しぶりだったけど、変わらない彼女の笑顔にホッとしました。みんなも普通に話しかけてくれて、すごく気持ちが楽になったのを覚えています。
山田:それから岡さんはだんだんと元気になり、笑顔を取り戻していきました。その年の春からは社会人になり、仕事も休まずプライベートも充実するように。そんな姿を見て、声を掛け続けたことは無駄じゃなかったんだと思えました。
「あなたが誰かを守っていくのよ」
岡:仕事を続けていると、同僚との付き合い方など、社会人ならではの悩みをもつようにもなりました。そんなとき、山田さんが霊友会に誘ってくれたんです。
山田:私も学生時代は親に言われるがまま活動していた霊友会。社会人になってから、つどいで聞く話や同年代の仲間の姿がすごく刺激的で、楽しくて自分に生かせる教えだなと思うようになりました。だから岡さんにも伝えたい、もっと一緒に成長したいと思い、支部長の家に連れていったんです。
岡:支部長に仕事の悩みを相談したときもらった言葉が、今も胸に残っています。「今までは、家族や友達に守られて大きくなった。いずれ結婚したり、母親になったら、あなたが誰かを守っていくのよ」。
私はずっと誰かに甘えて生きてきたんだなと思いました。両親は、学校に行けない私を温かく見守ってくれました。出られるかどうか分からない成人式のために振袖(ふりそで)も仕立ててくれました。一体、どんな気持ちだったんだろう。親がいれば最終的には何とかなると甘えてばかりで、全然感謝が足りなかったな。職場でも、周りの人に頼ってばかりだった。そんな自分を変えていこうと、今、頑張っています。
山田:一緒にお経をあげたり、つどいに参加するようになって、仕事に対する姿勢も変わり、支部の仲間も「岡さん変わったね」と言ってくれます。そんな彼女を見ていると、私も今まで親や支部長、仲間たちに支えられてきたんだなと、感謝の気持ちが湧いてきました。
私は元々、相手にどう思われるかを気にして深く踏み込めない性格でした。でも、岡さんとの関わりを通して、行動する大切さを実感した。先日友達を導いたときには、深く関わらないと相手の良さも、自分の駄目な部分も分からないんだと教えてもらいました。
これからも、いろんな人に「Myおせっかい」をして、たくさんの人の役に立てる青年法座主になるのが今の目標です。
岡:私も、これからは少しでも周りの人に「Myおせっかい」をしていけるよう頑張ります。
※支えてくれる支部長、仲間たちと。 2 人にとってかけがえのない存在