今月の
特集

2021.1.1

絶対にほっとかないって決めた

 一日の大半を共に過ごす職場の同僚。その一人ひとりの気持ちや事情を、どれだけ知っているだろうか。

令和2年4月「Myおせっかい」月間賞を受賞した佐藤聖花(北海道・33歳)さん。職場の人たちの幸せを願い、深く関わろうと頑張っている。そんな彼女のエピソードを紹介しよう。

    1. ■①— まさか、そんな事情を抱えていたなんて
      一昨年5月のことです。職場の昼休み、同じ部署の後輩・Aさんがひとりでぽつんと座っているのを見かけました。…続きを読む
    2. ■②— 関わってみると、たくさんのことが見えてきた
      Aさんとの体験は、私の考え方を大きく変えてくれました。それまでの私は、元気そうな人を見ると、きっと悩みなんて無いんだろうなと楽観的に考えていました。…続きを読む

①まさか、そんな事情を抱えていたなんて

一昨年5月のことです。職場の昼休み、同じ部署の後輩・Aさんがひとりでぽつんと座っているのを見かけました。
よく見ると、どうやら泣いていて……。すごく驚きました。彼女は天然キャラで、いつも笑顔で明るい子。泣いているところなんて見たこともないし、想像したことすらなかったから。思わず、「どうしたの?」と声をかけました。

Aさんは同僚からきつく注意されて、落ち込んだと話してくれました。「自分なりに頑張ってきたつもりなのに」。そう肩を落とす彼女をどうしてもほうっておけなくて、どうしたら元気を出してくれるかなと考えました。つどいでたくさんの人とふれあえば、何か彼女のプラスになるかもしれない。そう思い立ち、旭川で開催される「地域のつどい」に誘ったんです。Aさんはすぐに「行ってみる」と返事してくれました。

当日は私が車でAさんを迎えに行き、1時間ほどかけてつどいの会場に向かいました。実はAさんとは担当の業務が違うため、それまで深く話したことはありませんでした。これはAさんのことをもっと知れる絶好のチャンスだと思って、車の中や、途中で立ち寄ったランチの場でじっくり話をしました。仕事のこと、趣味のこと、家族のこと。そこでAさんがぽつりと、高校生の時に父親を亡くしていて、お母さんもお兄さんも病気がちだと打ち明けてくれたんです。まさか、そんな事情を抱えていたなんて……。普段の明るい彼女からは考えもつかないことでした。

実は私も7歳のときから15年間、母と生き別れになっていました。だから、親がいない寂しさ、悲しさは私にもよく分かります。私は従姉に導かれて霊友会の教えと巡り合い、たくさんの人と出会って少しずつ母への恨みや寂しさを克服することができました。そして、母と再会し、また一緒に暮せるようにもなれました。私と同じように、Aさんにも悩みを乗り越えてほしいから、霊友会の教えを伝えよう。そのとき強く感じたんです。

つどいでは、仲間のみんながまるで昔からの友達のようにAさんに話しかけてくれました。楽しそうなAさんの様子を見ていると、自分のことのように嬉しくなりました。そしてその日の夜、彼女を自宅まで送ると、お母さんが家から出てきてくださいました。「娘はあまり外に出歩くことがなくて、友達とも遊びに行くことがなかったから心配で……。今日は誘ってくれてありがとうございました」。

そうお母さんからお礼を言われたとき、何とも言えない気持ちがこみあげてきたんです。Aさんは病気がちな家族を心配して、友達より家族といることを優先してきたのかな。ただ一人健康な自分がしっかりしなきゃと、いつも笑顔で一生懸命仕事をしてきたんだな。同じ職場にいたのに、彼女の本当の気持ちに気づけず、本当に申し訳なかったと感じました。

あらためてAさんに幸せになってほしいと思い、その場で霊友会の教えを伝えました。その後も連絡を取り合ったり、一緒に食事に行って彼女の話を聞くようにしました。それは私が転職した今も続いています。

先日、Aさんから部署が異動になったと連絡がありました。私にお世話になったからと、いち早く報告してくれたんです。今は毎日、前向きな気持ちで仕事ができているそうです。私が少しでも彼女の役に立てたのなら、本当に嬉しい。これからも関わっていこうと思います。

※写真はイメージです。本文の登場人物とは関係ありません。

②関わってみると、 たくさんのことが見えてきた

Aさんとの体験は、私の考え方を大きく変えてくれました。それまでの私は、元気そうな人を見ると、きっと悩みなんて無いんだろうなと楽観的に考えていました。でも、そうじゃない。普段は明るい人も、実はひとりで悩んでいるかもしれない。そう思うようになり、周りの人への接し方を変えるきっかけになったんです。身近な友達、会員だけでなく、職場でもいろんな人に話しかけるようになりました。

昨年の8月に転職し、今は障がい者支援施設で働いています。普段は班に分かれて施設利用者のお世話をするのですが、他の班の人たちともコミュニケーションをとるように心がけていきました。自分から家族のこと、趣味のことなど、プライベートな話をすると、相手も話してくれます。その積み重ねの中で、何でも話せて、協力し合って仕事ができる関係になってきたと感じています。

そうすると、同僚の良いところもたくさん見えてきました。利用者のみなさんに冗談を言って場を和ませる。世話をする相手としてでなく、個性ある一人の人間として利用者と向き合う。本当に学ぶことがいっぱいあるんです。

私はある知的障がい者の人と接する際、思うようにコミュニケーションが取れずに困っていたときがありました。そのとき、同僚たちと積極的に関わってきたことが本当に役立ちました。同僚たちのようにその方の話をよく聞き、じっくり向き合う中で少しずつ言おうとしていることが分かってきたんです。「ばあば」はバス、「お、お」はお風呂、といったように。「そうだね、バスが走ってるね」と返事をすると、喜んで、明るい笑顔になってくれました。

今は新型コロナウイルスの感染リスクを抑えるため、施設で暮らす利用者 は外出ができません。私たち職員も不要不急の外出を自粛しています。大変な状況ではありますが、直接会えなくてもAさんや友達、会員と連絡を取り合う。職場では利用者や同僚の話を聞いて励まし合う。自分にできることに取り組んでいます。みんなで幸せになれるように、これからも人と深く関わっていきます。

※いつも元気をくれる地元の仲間たちと(令和元年5 月「地域のつどい」で撮影)
※取材は電話で行いました。