タイ王国とカンボジア王国との国境沿い、シーサケート県に住むパイワン・コラウットさん（54歳）。家族５人で貧しい生活を送り、自宅も抵当に入れられる寸前だったそうです。

※左から、タナンヤーさん、パイワンさん、長男のサンティさん、タナンヤーさんのお母さん、夫のソンタヤーさん

「どんなに働いても楽になれないという現実から逃げたくて、私は10年以上にわたって酒に溺れていました。夫も同じく酒びたり、そして、夫婦喧嘩ばかりしていたんです」。

そんなパイワンさんが霊友会の教えに出合ったのは４年前。その頃、パイワンさんは長男のサンティさん（24歳）との関係について悩んでいました。

「サンティは夫と同じく建築関係の仕事をしていますが、仕事に身が入らないようで、家にお金を入れてもくれません。私はあれこれと声をかけるのですが、聞く耳を持ってくれません。

　そんなとき、従姉妹のタナンヤーさんが私たち家族のことを気にかけ、よく家を訪ねてくれました。
　ある日、彼女に長男についての悩みを相談したとき、霊友会の話を聞いたんです。『亡くなったあなたのご両親に守っていただき、長男の問題解決ができるように、ご先祖ご供養をしてみませんか』という言葉を聞き、両親の供養ができ、長男との関係を修復できるのならと入会しました。

　毎日、先祖にすがるような思いでお経をあげました。するとある日、ふと、サンティの言葉を思い出しました。

『母さんが酒をやめたら、俺は真面目に仕事を頑張るし、家族も助けるよ』。
　ハッとしました。サンティは確かにそう言ったのに、私はずっと酒をやめられていなかったのです。それからは、酒を飲みたくなるたびに先祖に手を合わせ、『私は酒をやめて、自分を改めます。ですからどうか、家族を守ってください』と念願しました。

　そうして２年が経ち、少しずつ、酒に依存しないで暮らせるようになっていったのです」。

　しかし、パイワンさんに新たな問題が……。サンティさんが、違法薬物を使用して逮捕されたのです。その知らせを聞いてショックを受けたパイワンさんのもとに、タナンヤーさんが心配して、すぐに駆けつけました。

「長男のために、何がなんでも頑張る！」

「タナンヤーさんは、一人でも多くの人に霊友会の教えを伝えていきましょうと言いました。私は、長男のためになるなら、何がなんでも頑張ろうと決意し、霊友会の話をするため、地元の人たちの家を訪ねて歩くようになりました」。

パイワンさんが霊友会の教えを伝えたのは、導いたのは貧しい境遇の人たちばかりでした。彼女は自宅でつどいを開くようになり、入会した会員との関わりが増えていきました。パイワンさんは、近所に住んでいたある女性の会員について語ってくれました。

「彼女は、命に関わる重い病気を抱えていました。だけど、それを感じさせないくらいに明るくて、しっかりとした人でした。事情があって、彼女の家でお経があげられなかったので、毎朝５時に彼女が私の家にお経をあげにきました。私も、なんとか彼女に長生きしてほしくて、一緒に念願したんです。
　しかし彼女は、残念ながら亡くなってしまいました。私は今も、お経をあげるたびに、彼女のことを思い出します。
　今までの私は、自分の悩みだけで精いっぱいだったんですが、会員たちと関わる中で、人のために何かをしたいと思うようになりました。会員が抱えている問題をどう解決していけばいいのかを、一緒に考えました。

　その経験を生かしながら、家族の問題にも向き合いました。すると『私は今まで、なんてひどい母親だったんだろう』と痛感したんです。
　私は、サンティを放っておいて、親の夫婦喧嘩を毎日のように見せてばかり。彼の心情を思うと、胸が締め付けられました。私は、出所して家に帰ってきたサンティに謝りました。彼の話を聞き、気持ちを伝え合うと、だんだんと彼は、仕事に真剣に打ち込み、家族を助けてくれるようになったんです。

　夫に対してもこれまでの言動を改め、彼を支えていくことを心がけました。すると、夫婦喧嘩も徐々に減っていきました。
　以前は、酔っ払って、自宅でつどいを開くたびに私たちをからかっていた夫が、最近はお酒を控え、つどいの場に一緒に座ってくれます。子どもたちにも、『難しいことは分からなくても、先祖に手を合わせるのは良いことだ』と言っています。
　今は、借金を少しずつ返していく目処が立ちました。家族の会話も増え、仲良く暮らしています」。

タイでは、コロナ禍の影響で非常事態宣言が１年以上発令されたままです（５月現在）。パイワンさんも生活に影響を受けましたが、精力的に活動を続けています。

※つどいの後に、自宅の軒先で涼をとり、食事を楽しむパイワンさんたち（左から2人目がパイワンさん）

「私たちの地域には貧しい人が多く、不安が広がっています。だけど、こんなときだからこそ、自宅でつどいを開くときは誰でも入りやすいように入り口を開け、多くの人との交流を大切にしています。今はコロナ禍の前よりも、いろいろな人と話す機会が増えたように思います。今まで家族やタナンヤーさんたちに支えられた分、今度は近所や周りの人たちにも幸せになってもらえるように、この教えを広げていきます」。

※タイ霊友会が主催した研修会に参加し、お経をあげるパイワンさん（右から2人目）