Global Voice
2022.1.1
人を思いやることを心がければ
自分を変えられる
フィリピン北東部のサンチャゴ市ルナ村で、4人兄妹の長男として生まれ育ったクリスティアン・スダリアさん (20歳)。
人前で言葉に詰まる〝あがり症〟に悩んでいた彼は、大勢の前で発表する「両親への手紙コンテスト」に参加することに……。
〝あがり症〞の自分に自信が持てず、家に閉じこもっていた
私が7歳のとき、父をバイク事故で亡くしました。母は悲しむ間もなく、家族を養うために2年間外国へ出稼ぎに行きました。
母がいない間、祖母のベニルダが、私たち兄妹の母親代わりでした。私は、優しい祖母がいる居心地の良い我が家にいることが大好きです。
そんな私ですが、内気で、他人に注目されると緊張して言葉に詰まってしまう、いわゆる〝あがり症〞です。恥ずかしい失敗も重ねてきました。
自分に自信がなくなっていた私はいつしか学校以外の場所にはほとんど出かけず、家に籠もるようになり、祖母や母からは、クラスや村の中で孤立してはいないかと心配されました。私自身も18歳になり、高校卒業後の進路を考えていくうちに、今の自分に不安を感じるようになったのです。
そんなとき、数少ない友人のジャスティン・ファビアン君に、フィリピン霊友会が主催する「両親への手紙コンテスト」に出ないかと誘われました。彼は以前にこのコンテストの地区大会で優勝し、首都・マニラで行われる全国大会に出場したそうです。
私は彼の話に興味が湧きましたが、「あがり症の私が大勢の前で発表するなんて、できるわけがないよ」と、一度は断ったのです。するとファビアン君は、霊友会の教えについて話してくれました。亡くなった父の供養ができることや、「周りの人を思いやることを心がけて、自分を変えられるんだよ」と彼から聞いた私は霊友会に入会し、コンテストで発表する手紙を書き始めたのです。
その後、コンテストを手伝う霊友会の先輩たちからの勧めもあり、自宅でお経をあげ、つどいにも参加するようになりました。
つどいで様々な人の話を聞く中で特に印象に残ったのは、自分に自信が持てない子どもをもつ親の体験談でした。その子どもは、自分の気持ちを否定されるのではないかと不安を抱えており、両親に全く心を開かなかったそうです。
私は思わず自分と重ねました。私の母や祖母は、私の人間関係や進路のことなどをいつも気にかけてくれましたが、私は悩みや本音を打ち明けませんでした。話しても余計に心配をかけるだけだと思ったからです。
表面上は家族仲良く暮らせているように見えても、お互いの気持ちは分からない。逆に不安を与えていたのかも…。親の気持ちについて考えさせられた私は、支えてきてくれた家族を信じて、今の気持ちを伝えてみようと初めて思いました。
※「両親への手紙コンテスト」参加のために支えてくれた霊友会の先輩たちと一緒に
大勢の前で、思いを伝える自分を変える転機に
コンテスト当日、大勢の前でステージに立つことは緊張しましたが、祖母がそばで励ましてくれました。
私は、父の死や、抱えてきた悩み、母と祖母が力を合わせて私を育ててくれたことへの感謝を、一つひとつ伝えました。将来、建築士の資格を取って就職し、今度は私が家族を支えていきたい。そんな手紙を読む間、祖母はずっと涙を流していました。
読み終えた後、祖母は何も言わずに、私を力いっぱい抱きしめてくれたのです。その姿を見た人たちからの大きな拍手が、私たちに降り注ぎました。
それから私は、全国大会に出場しました。ファビアン君たちと一緒にマニラを訪れ、華やかな街でいろいろな人たちと出会い、友だちがたくさんできました。刺激的で、本当に楽しかったです。私はコンテストに参加したことをきっかけに、悩んでいた〝あがり症〞を少しずつ克服できたのです。
今は大学に通って、建築学を学んでいます。また、友だちに自分の体験や霊友会の教えを伝えていくと、先祖供養に興味を持ってくれた人が入会してくれました。コロナで直接会えなくてもオンラインを使ってつどいを開いています。
私は、コンテストを機に入会した祖母と一緒にお経をあげるときは、私たち兄妹や友人たちが勉学に専念できるようにと念願します。すると、つらいときも、落ち着いて自分を振り返ることができました。
これからも、先祖を供養し、家族の絆を深めていく大切さをみんなに伝えていきたいです。
※2019年に行われた「両親への手紙コンテスト」の地区大会で家族への手紙を読み上げるスダリアさん(右)