14.法華経の精神に目覚め 社会に大きく目を開けば、 必ず社会奉仕の精神は生かされる
ロンドンの英国赤十字社本社を訪ね、バーク顧問(左)と会談された小谷恩師。恩師の奥に写っているのは随行の濱口八重国友婦人会理事(後に第二十二支部長、第3代会長)
昭和28年(1953年)、欧米各国の福祉施設と社会事業を視察する旅で、日本赤十字社の親善大使としての大役を果たされた小谷喜美恩師。アメリカに次いで訪問されたのが、イギリスのロンドンでした。小谷恩師は後年、次のように回想されています。
アメリカでの視察と同じように、イギリスでも真っ先に英国赤十字社を訪問させていただきました。そして、国際関係や救済活動などの仕事に長年携わってこられた英国赤十字社顧問のバーク夫人にお会いし、輸血のための血液事業のこと、看護婦さんの仕事のこと、社会事業のことなどを懇切丁寧に教えていただきました。
その中で感心させられたことの一つが、英国では、身寄りのないお年寄りのために、婦人たちが温かい食事を運んでお世話をする奉仕活動が盛んに行われているということでした。これは日本でも、ぜひ参考にさせていただきたいと思いました。
翌日、病人を有意義に慰安するための絵が展示されている設備をバークさんと一緒に拝見し、日本からもよい絵を送っていただきたいと頼まれてまいりました。
その後、19世紀半ばのクリミア戦争で負傷した兵士への献身的な看護で有名な、イギリスの看護婦ナイチンゲールが暮らした家に案内していただきました。表から見ても中を見ましても、それほど立派な家ではございません。そして、彼女の活動に影響を受けたスイス人・デュナンの呼びかけによって国際赤十字が誕生したこと、たくさんの社会事業の仕事をされたことなど、ナイチンゲールのいろいろなお話をバークさんから伺いました。
その後も社会事業施設などを視察訪問させていただきましたが、関係者のみなさんが非常に几帳面で、かつ人情味あふれる人たちであったことが印象に残りました。
その後、スウェーデン、デンマーク、オランダ、ドイツ、フランス、スイス、イタリアを歴訪された小谷恩師。米英両国と同じように、人々に奉仕の心を養ってもらうために国をあげて子どもたちへの教育に力を入れ、奉仕活動に取り組んでいる各国赤十字社の活動を視察されました。そして、国家の将来を担う青年の育成に尽力している活動を目の当たりにされ、大きな感銘を受けられたのです。その思いが、後に語られた小谷恩師の次のお言葉に表れています。
「人は困ったときに、お互いに心から助け合う気持ちが大切です。広く社会に同情の思いを向けなければなりません」というバーク顧問の話に、私は心を打たれました。 欧米では、子どもたちにも小さい頃から社会奉仕の精神を教え育んでいる。今の我が国との違いはここにある。日本人には、社会への眼差しや思いやりが欠けている。
しかし、法華経の大乗の精神に目覚め、菩提心をもって社会全体に大きく目を開けば、必ずや社会奉仕の精神は生かされる。
小谷恩師は帰国後、奉仕活動と社会事業により一層取り組まれるとともに、「次代を担う青少年の育成こそ、霊友会が国家・社会に果たすべき大きな役割である」と明言。昭和29年(1954)の青年部発足、同39年(1964)の弥勒山建立にもつながっていくのです。