社会を学ぶ

 2016 年時点の聴覚・言語障がい者数は 34 万 1 千人である。このうち、聴覚障がい者数は 29 万 7 千人である。(資料)三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社「政策研究レポート」より参照

◇霊友会福祉センター主催 オンライン手話のつどい◇

 世の中の問題を他人(ひと)事にせず、自分にできることから社会に貢献していく。そんな青年を目指すためのコーナー。今月取り上げるのは、霊友会福祉センター主催の「オンライン手話のつどい」。誰でも気軽に手話を学べるだけでなく、手話によるコミュニケーションを通して、いろんな人が互いの意見や思いを語り合える場として好評開催中です。青年部執行部による体験レポートや、昨年から参加している青年のインタビューなどをお届けします。

 はじめに―「聴覚障がい」と「手話」って?

 「聴覚障がい」とは、音や声が聞こえない、あるいは聞こえにくい障がいのこと。厚生労働省の「生活のしづらさなどに関する調査」(2016年)によると、身体障がい者手帳を取得している人のうち、「聴覚・言語障がい」に分類される人は約34万人います。

 一口に聴覚障がいと言っても、生まれつき、病気や事故、加齢による場合など、原因は様々。そして、障がいの程度や聞こえ方、言語発達の状態も人によって異なります。

「手話」は、聴覚障がい者同士の手真似から自然発生的に生まれたと言われています。相手が話す口の形を見て内容を理解し、自らも発語をする「口話法」や、「筆談」、五十音を指の形で表す「指文字」と同様に、聴覚障がい者のコミュニケーション手段の1つです。

 日本では、聴覚障がい児者への教育現場において、手話よりも口話法が重視された時代が長らくありました。しかし、国連が指定した「国際障害者年」(1981年)や、1990年代のテレビドラマの影響によって手話への関心が高まり、手話を学ぶ人も増えてきたと言われています。

 「オンライン手話のつどい」はこうして生まれた

 障がいのある人、その家族・介護者・介助者、ボランティアの「三者」がお互いの立場を尊重し、支え合いながら、障がいのある人も健常者も区別なく共に行動し、社会に貢献する―。その理念のもと、昭和52年(1977)、現在も霊友会の福祉活動の根幹を担う「三者の会」が発足しました。

 その2年後の昭和54年(1979)4月から、霊友会福祉センターで「手話講習会」を実施。霊友会手話通訳奉仕者や手話講師を養成し、また、様々な人に手話にふれてもらうことをきっかけに、“三者”の理念を社会に広げていこうと活動してきました。

 世の中は今、年齢や性別、国籍、障がいの有無、ライフスタイルや価値観にかかわらず、それぞれの個を尊重し、認め合う多様性の時代。“三者”の理念がますます発揮されていく現代において、その一翼を担おうと、手話によるコミュニケーションを主眼とした「オンライン手話のつどい」を昨年からスタートしたのです。

 「オンライン手話のつどい」に参加してみました!


青年部執行部 韓 麗奈(はん りょな)

 手話って難しそうだし、よく分からない。「オンライン手話のつどい」に参加して、そんなイメージが一変しました。手や指の動き一つひとつになるほど!と思える意味があるから覚えやすいし、何より、聴覚障がいのある青年も参加していて、いろんな人の意見や思いを聞けて楽しい。1時間半があっという間でした。

 私はデイサービス* の仕事をしていますが、実は数カ月前から聴覚に障がいのある方が通所されているんです。慌ただしい業務中に常に筆談を使う余裕はなく、身振り手振りで伝えようとするものの、意思疎通が難しくて困っていました。

 でも、手話を覚えればコミュニケーションの幅が広がる。難しそうだからと避けるのではなく、私も努力して、相手に寄り添っていける自分になろう。「オンライン手話」に参加して、そう思いました。

 これから私も、少しずつ手話を覚えていきたいと思います。みなさんもぜひ参加してみませんか?

*デイサービス主に高齢者などの要介護者、障がい児者が、施設に入所せず日帰りで利用できる通所介護サービス

【この日のプログラム(初級クラス・第4回)
○自己紹介・他己紹介
○前回の復習(家族紹介)
○本日のテーマ
 「趣味について話そう」
○休憩
○手話について語り合おう
 (質疑応答、感想など)
○指文字クイズ


LESSON! Sign language

趣味の話題で、手話で「歌う」を表現している場面(人差し指と中指を口の端から円を描きながら左右に広げる)

福祉センターの講師が丁寧に教えてくれ、参加者同士でも教え合う

 

【今からでも応募可能!「オンライン手話のつどい」参加募集】
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いつでもだれでも、やさしいオンライン手話!(入門
令和5年(2023)3月まで、毎月1回、月曜日に開催(全12回)
〈15時~ 16時30分〉
手話表現をゆっくり丁寧に繰り返し習得したい方向け
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みんなで手話(かた)ろう! オンライン手話(初級・中級)
令和5年(2023)3月まで、毎月1回、日曜日に開催(全12回)
〈初級 19時~ 20時30分〉
基本的な手話コミュニケーションを身に付けたい方向け
〈中級 13時~ 14時30分〉
昨年度の入門講座を修了した方、
基本的な会話表現ができる方向け
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*個人のスマートフォンやタブレット、パソコンでWEBミーティングアプリ「Zoom」にアクセスし、参加していただきます。
*当日参加できなかった方のために、YouTubeの録画配信も行います。
*詳しくは、霊友会福祉センターまでお問い合わせください。
TEL 03-5563-2510 FAX 03-5563-2541 Eメール fukushi@reiyukai.or.jp

 

【INTERVIEW】

 自分の経験を生かして、人のために!
K.Yさん 京都府・31歳女性

「オンライン手話のつどい」には、幅広い年代の人が参加しています。そのうちの1人で、昨年から参加しているK.Yさんに、手話との出合い、参加して感じたことなどを聞きました。


 私は子どもの頃から、福祉やボランティア、人の役に立つことに興味がありました。両親は共働きで、忙しい中でも、町内会の活動をして人のために動く姿を見ていたので、その影響が大きいと思います。「手話」は元々興味があって、大学に入り手話部があると知り、迷わず入部しました。

 手話部では、講師の先生に簡単な手話表現から少しずつ教わり、手話コーラスをみんなで覚えて、聴覚障がい者のいる学校や施設に行って披露したり、交流をしたりと、楽しく活動していました。

 卒業後は京都の旅館に就職。とても忙しい毎日でしたが、合間をぬって手話での自己紹介や簡単な日常会話の表現など、大学で覚えたことを思い出して復習し、自分なりに手話の勉強を続けていました。

 一昨年から、支部の京都南部青年部地域役員のお役をいただきました。それまでは仕事が忙しく、つどいや弥勒山行事に行けるときは参加していましたが、積極的には参加していなかったので、「これを機に頑張ろう」と思った矢先、新型コロナウイルスがまん延しました。

 予定していた支部の行事や活動も中止や延期になり、あれほど忙しかった仕事は実質休業状態に。今までできていた行動が制限され、何もできない、どうすれば良いのかと悩んでいました。

 そんなとき、支部では、オンラインを活用してつどいを開くなど、会員さんのために何かしようと動く仲間たちの姿がありました。職場では、時間がある今だからこそできることをやろうと、女将(おかみ)さんが私たちに茶道を基礎から教えてくれました。自分から動いて、前向きに壁を乗り越えようとするみなさんの姿を見て、刺激を受けたんです。私も、今できることを見つけてやってみよう。そう思いました。

 「オンライン手話のつどい」で学んだことを職場で生かす

 昨年、「オンライン手話のつどい」が始まるという情報を『明法』で目にしました。「これだ!」と思ってすぐに問い合わせ、参加することにしました。

 講師の方々が丁寧に教えてくださり、初めて手話にふれる人でも楽しめる。聴覚障がいのある青年の方も参加していて、実際にコミュニケーションを取る上での苦労や意思疎通ができたときの喜びも聞ける。「南無妙法蓮華経」など、大学の手話部では学ばなかった専門的な手話表現も学べて、「オンライン手話のつどい」は想像していた以上に面白く、学びの多い貴重な機会でした。

「せっかく教えてもらったことを、何かに生かせればいいな」。そう思っていたら、チャンスがやってきました。私が働く旅館で、様々なお客様のニーズに応えようと、聴覚障がい者への対応や手話について学ぶ自主研修を開くことになり、その企画を私に任されたんです。

「オンライン手話のつどい」で学んだことを参考に研修の内容を考え、実施することができました。一緒に働く従業員も手話に興味をもってくれ、やって良かったなと実感しました。自分が学んだことを、人のために生かせるってうれしいなと思ったんです。今後も定期的に開催していく予定の研修を、自分から積極的に企画していこうと前向きな気持ちになりました。

 今、少しずつお客様も戻ってきて、「接客業っていいな、人とふれ合うっていいな」と感じている毎日です。仕事ができることに感謝の気持ちを忘れず、「オンライン手話のつどい」で学んだことを生かしていきたい。お客様として来られる聴覚障がい者の対応はもちろん、職場以外でも、聴覚障がい者を見かけたら自分から声をかけていきたいと思います。

 支部でも、秋にはみんなで集まるつどいができるようにと、仲間と一緒に経行や声かけに取り組んでいます。これからも自分にできることを見つけて、人や地域社会の役に立つ青年になっていきます。

※写真はイメージです。本文の登場人物とは関係ありません。