社会を学ぶ

 令和4年5月20日〜22日に行われた、第43回弥勒山「三者のつどい(春班)」の2日目に行われた分科会「ボランティアのつどい」。3人の視覚障がい者が登壇し、視覚障がいへの理解を深め、より良い関わり方を学ぼうという趣旨で行われたつどいの内容を紹介します。

みんなが安心して暮らせる社会をつくろう

三浦 日本には障がい者手帳を持つ視覚障がい者が約30万人います。ただ、手帳を取得するのを好まない人も多く、一説によると潜在的には全体で100万人を超えるとも言われています。


霊友会福祉センター職員  三浦一男 さん

 30万人のうち、全盲の人が10万、弱視の人が20万。私は弱視で、特に視界の中心が見えにくい中心暗点という状態です。

宮本 私は生まれつき弱視ですが、30代まではメガネをかけて視力が0.5ありました。しかし今は視野の端で少し見えるだけ。それも体調によって見えたり見えなかったりします。


宮本和子 さん

影澤 私は生まれて4カ月目に、目のがんで両目を失いました。ものを見た記憶はないし、色も分かりません。


影澤哲二 さん

三浦 突然ですが会場のみなさん、目を閉じて天井を見上げてみてください。まぶたから少し蛍光灯の明かりを感じますよね。見えないけど、明るいか暗いかは分かる。そういう状態の人もいます。次に、そのまま手で目全体を覆ってください。どうですか。真っ暗ですよね。影澤さんはこういう状態です。一口に視覚障がいと言っても、見え方は千差万別です。

 では、視覚障がい者にとってとり大変なことは何か。一つは、必要な情報を的確に手に入れることです。
 そのため、本や雑誌、新聞などに書かれたさまざまな情報を点訳、音訳して発信する点字図書館が全国にあります。私が勤める霊友会法友文庫点字図書館もその一つです。

 もう一つが、どのようにして行きたい場所へ行くかということ。外を出歩くために、白杖または盲導犬を使います。白杖は視覚障がい者のシンボルマークですね。
 駅や交差点等いろんな場所にある点字ブロックも、大きな助けになります。移動の方向を示す「線状の突起」の誘導ブロックと、注意喚起を示す「点状の突起」の警告ブロックの2種類があります。
 さらに駅では、警告ブロックの内側に線状の突起を足した内方線(ないほうせん)付き点字ブロックが作られ、ホームの内側と外側が分かるようになりました。

積極的に他者と関わり、生き生きと人生を送る

宮本 白杖や点字ブロックは必要なものですが、それだけでは私たちは行動できません。点字ブロックが無い場所もあるし、実際に歩いてみると迷うことも多いんです。そういうときは、晴れている日だったら、背中に太陽の温かさを感じるから今の時間ならこっちが南だなとか、そうやって方角を確かめたりもするんですよ。

三浦 聴覚も使いますよね。周りの音を聞くだけじゃなくて、自分が出す音の反響の仕方で近くに柱や壁があることを把握したりします。ただし集中力がいるので、疲れると間違ったり、酷使すると難聴になる危険があったりします。
 それから嗅覚、匂いですね。例えば、ラーメン屋のところは曲がり角だな、カレー屋の前だからあの道だなど、匂いで場所を記憶しています。
 そして特に大事なのは、実は触覚なんです。歩道のちょっとした段差、マンホールの蓋など、足の裏から得る微かな情報で自分の中に地図を作るんです。
 とは言え、あらゆる感覚を頼りにスムーズに歩けるのは、記憶された道だからこそ。初めて訪れる場所に一人で行くことは至難の業です。外出に同行してくれるガイドヘルパーを頼める場合はいいですが……。影澤さん、それもできないときはどうしますか?

影澤 誰かに声をかけて、「すみません。どこそこに行きたいんですけど、どっちの方向ですか?」と聞きますね。

三浦 そうです、他人を頼る。いい意味でどんどん人を利用するんです。
自分一人でできることには限界があります。障がい者自身が積極的に他者と関わり、人に助けてもらうことで、行きたい場所にも行けるし、やりたいことも叶えられる。影澤さんは、何度も海外旅行に行っているし、趣味のマラソンで海外の大会にも出ているんですよ。
 そうやって、この社会の一員として生き生きと人生を楽しむことが、本当の意味で「自立」なんだと私は思います。

障がい者に声をかける側にとって大切なこと

参加者 先日、音が出ない信号機のある交差点で、白杖を持った方が赤信号なのに渡ろうとしていたんです。慌てて後ろから「危ないですよ!」って声をかけたら止まってくれて、事なきを得たんですが……。そういう声のかけ方で良かったでしょうか。

影澤 私は車の流れる音で信号を判断しているのですが、赤信号で渡ってしまい、危うく事故に遭いかけたことがありました。やはり声をかけてもらえるとありがたいです。

三浦 さらに言えば、「白杖の人、危ないですよ」と付け加えるとより親切ですね。地下鉄でホームの端を歩いていた視覚障がい者に、駅員さんが遠くから「危ないですよ。止まってください」と声をかけたのに転落してしまったという事故も起きています。「白杖の人」と言われて初めて、自分のことかなって気付けるんですね。内方線付き点字ブロックやホームドアの設置など、対策も進んでいますが、大切なのはやはり周りの見守りと声かけではないでしょうか。

影澤 介助者といる時に、なぜか介助者ばかりに声をかけて、私のことは無視されることが多々あります。私はここにいるのにと悲しくなります。障がい者だからって難しく考えたり、変に気を遣ったりせずに、一人の人間として接してほしいんです。

三浦 最後にお願いです。今回の話をぜひ、いろんな人に伝えてください。それをきっかけに障がい者の直面する現実を知る人の輪が広がって、みんなで助け合う社会にもつながっていくと思うんです。
 視覚障がい者への視点が変われば、他の様々な障がいへの理解・共感も進むと思います。誰もが安心して暮らすことができ、一人ひとりが持つ可能性を活かせる社会をみんなで一緒につくっていきましょう。

誰もが平等に情報を得られるように ~霊友会法友文庫点字図書館の活動~  

目が不自由なため、日常生活や社会生活を送る上で必要な情報が十分に得られない。そんな人たちの「情報障害」を解消しようと、全国各地に「点字図書館」が設置され、書籍・新聞等の点訳・音訳、貸し出しを行っています。

さまざまなジャンルの点字図書がずらり

 霊友会では、昭和29年(1954)4月、青年部が発足した直後、「社会に貢献したい」という青年たちの熱い思いで、点訳・朗読(音訳)奉仕活動が始まりました。完成した点字図書を蔵書とし、恩師小谷喜美先生が命名された「霊友会法友文庫点字図書館」が同34年(1959)に開所。点字・録音図書の貸し出しや蔵書管理、『あした21』『明法』の点訳・音訳(録音)等、誰もが平等に情報を得られる社会を目指して、さまざまなことに取り組んでいます。

霊友会公式HPで「霊友会が目指すもの~不変の教えを現代に~」の音声版が聞けます。音訳に触れてみたい人はぜひ聞いてみてください。


録音図書の録音・再生で使用するアイテム


点訳した『あした21』『明法』を点字プリンターで印刷・製本し、目の不自由な会員や各地の霊友会施設に送っています

【お問い合わせ】霊友会法友文庫点字図書館
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