社会を学ぶ

 乳児院は全国に145カ所、乳児院で暮らす子どもは2472人*令和3年3月末現在。データ参照:厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課「社会的養育の推進に向けて」

 

乳児院での奉仕活動から青年たちが学んだこと

 世の中の問題を他人事にせず、自分にできることで社会に貢献していく。そんな青年を目指すためのコーナー。

 今月は、第四支部の会員が長年行ってきた乳児院での奉仕活動を取り上げます。そもそも、乳児院とはどのようなところなのでしょうか。そこでどんな奉仕活動を行い、参加した青年たちは何を感じ、何を学んでいるのでしょうか。一緒に見ていきましょう。

|   乳児院ってこんなところ

 乳児院は、様々な事情で保護者と一緒に暮らすことができない乳幼児を保護し、養育する施設です。虐待を受けた子や、何らかの疾患、障がいのある子も少なくありません。そのため、保育士のほかに、医師や看護師、栄養士、心理療法担当職員、家庭支援専門相談員など、様々な専門家が配置されています。子どもたちが24時間、乳児院で安全に過ごせるように運営するだけでなく、児童相談所や行政機関などとも連携しながら、退所後のケアを含む保護者や里親の支援、育児相談やショートステイといった地域の子育て支援も行っています。

 昭和22年(1947)の児童福祉法制定を機に設置された乳児院の当初の目的は、戦災孤児や、栄養・衛生上の問題による発育不良、感染症などから子どもたちを保護するものでした。その後、時代の変化と共に、子どもたちとその家族が地域で幸せに過ごしていくため、多岐にわたる役割を担うようになってきたのです。

【INTERVIEW】

|   子どもたちの笑顔のために

 「麻布乳児院」での奉仕活動に長年参加してきた青年たちに、これまでの活動を振り返ってもらいました。

T.Y 活動が始まった頃はみんなまだ学生だったね。その頃、全国で青年部を中心に社会貢献活動に力を入れ始めていて、私たちの支部では何をしようかって相談していたんだよね。それでたしか……

O.T 先端支部長が「麻布乳児院」の職員の方と繋がりがあって、そこから話が進み、奉仕活動をさせてもらうことになったんだよね。

T.D 俺はまだ中学生で、活動の意義なんて全然分かってなかったな。でも、体を動かして清掃をしたり、支部の仲間と会って話せるのが楽しくて、友達も誘って毎年参加するようになった。大学生のときは、家庭教師をしてた教え子が毎年来てくれて、仲間とふれ合って喜んで帰ってくれたのが印象に残ってるよ。

M.T 俺は2008年に結婚したのを機に霊友会に入会したけど、最初は霊友会活動を全然やる気がなかった。5年後くらいにこの活動に初めて参加して、自分の体を使って人の役に立つことをするって気持ちいいな!と思ったのを覚えてる。それからみんなとも仲良くなれたし、霊友会を真剣にやるきっかけの一つにもなった。

O.Y 「乳児院のボランティアやるから一緒に行こう」って、友達も誘いやすかった。誰でも気軽に参加できる活動にするって、大切なことだよね。今はコロナ禍で活動が制限されているけど、一日も早く再開したい。

|   自分には何ができるだろう

T.D 乳児院がどんなところか最初は全然知らなかったけど、毎年足を運んで、職員の方の話を聞くうちに、色々な家庭の子がいるんだなって知って、真剣に考えるようにもなったね。

M.T 子どもがいる部屋の窓を外側から拭き掃除したとき、目が合った子の驚いた表情が今でも忘れられなくてさ。ああそうか、人とふれ合う機会が少ないんだな、と思った。子をもつ親として、子どもたちが幸せに過ごせる社会にするために、自分には何ができるだろうっていつも考えさせられる。

O.T 活動を始めた頃は、草むしりとか、外での作業が中心。回を重ねるごとに信頼してもらえたのか、徐々に中に入らせてもらえたんだよね。継続することで、自分たちにできることが増えていくのはうれしい。これからも、少しでも何かお役に立てる自分たちでありたいなと思う。

W.T 最近、仕事で子どもシェルター(虐待などにより居場所のない子どものための一時避難所)について知る機会があって。辛い境遇にいる子どもは世の中にまだまだいるんだなって思った。「麻布乳児院」には行く度に、子どもたちの笑顔に心が洗われるんだよね。あんなに純粋無垢(むく)な笑顔を見ると、子どもには何の罪もないってあらためて実感する。こういう施設の存在をたくさんの人に知ってもらって、生かしてもらいたいなって思う。

O.T 色々な専門家の方がいる乳児院は、子どもにとって一番安全な場所かもしれない。そう思うくらい、乳幼児にまつわる心を痛めるニュースが多い世の中だよね。まだまだ多くの人に知られてはいない、こういう場所で貴重な奉仕体験ができている環境に感謝して、私たちからもっと周りの人に、社会に目を向けていく大切さを発信していきたいね。

Y.K 最近、子どもが生まれたんだ。里帰り出産の妻のそばに自分が居てあげられないから、妻が相談できる家族や友達が近くにいることがすごく大きいと思った。人って、困ったら何か手伝うよってひと声かけてくれる人の存在に、一番救われると思うんだよね。

 周りの友達も子育て家庭が増えてきたから、自分ももっと色々なことを学びながら、友達の力になれるように行動していきたいな!

|   霊友会の会員による奉仕活動のあゆみ

 霊友会が「ありがとう こだま 基金」で支援する先の一つに、「社会福祉法人恩賜財団慶福育児会 麻布乳児院(以下、麻布乳児院)」(東京都港区)があります。基本理念は「個性の尊重」「心身の健全な発達促進」「家族や地域社会との連携」。定員は70人で、様々な家庭の理由で養育ができない乳幼児(0~3歳くらいまで)を預かり、子どもたちが愛されていることを実感できる養育に努めている施設です。

 そんな「麻布乳児院」と霊友会の関係はとても古く、恩師久保角太郎先生のご遺志を継いだ恩師小谷喜美先生が先頭に立たれ、国友(くにとも)婦人会が中心となって行った社会福祉施設への慰問・奉仕活動の一環として、昭和29年(1954)から交流が始まりました。

 平成17年(2005)からは、第四支部の会員たちがその担い手となり、恩師の志を受け継いで、施設の清掃や草むしりなどの奉仕活動を続けてきました。平成26年(2014)には、「麻布乳児院」から、子どもたちのためにすべり台を作りたいという要望があり、「ありがとう こだま 基金」で支援も行いました。

 『ありがとう こだま 基金』

 「ありがとう こだま 基金」は、久保恩師と小谷恩師の人に社会に尽くす精神を受け継いで、平成20年(2008)に設立されました。様々な事情で学校に行けない子どもたち、障がいや難病をもつ子どもたち、海外で貧困に苦しむ子どもたちなどへの支援のほか、災害で大きな被害を受けた国内外の自治体にも基金から義援金を贈呈しています。この「ありがとう こだま 基金」は募金のほか、毎月会費の一部を拠出し、令和4年(2022)は48団体へ贈呈しました。

*お問い合わせは、「ありがとう こだま 基金」事務局まで。
106-8644 東京都港区麻布台1-7-8 霊友会総務部内
TEL 03-5563-2520 FAX 03-3583-6177

※写真はイメージです。本文の登場人物とは関係ありません。