社会を学ぶ

 障害のある人は、社会の中でどんなことにバリアを感じているのでしょうか。障害のある人が社会の中で直面しているバリアには、大きく分けて4つあります。日本で身体障害・精神障害・知的障害のある人は、15人に1人。障害のない人が多数を占めているため、これまでは障害のない人に合わせた社会がつくられており、障害のある人にとっては生活しにくい、困りごとを生むバリアとなっています。

 世の中の問題を他人事にせず、自分にできることから社会に貢献していく。そんな青年を目指すためのコーナー。震災復興イベントとして第10回「笑顔まつり」を企画した宮城県Myおせっかい推進委員会では、そのプレイベントとして、子をもつ親のさまざまな悩みやニーズに応えようと「子育てサロン」を企画。今月号では、「障がいのある子をもつ親御さんの交流とサポート理解」をテーマに、以前から交流のある宮城県内の2団体から講師を招いたサロンの内容を紹介します。

心のバリアをなくしていこう

第10回「笑顔まつり」実行委員会(宮城県Myおせっかい推進委員会)主催
第2回「子育てサロン」(2月5日)インナートリップセンター仙台・オンライン

山元町社会福祉協議会「山元町障害者地域活動支援センターやすらぎ」相談支援専門員
遠藤 ひとみ 氏(写真左)

NPO法人ポラリス「相談支援室ポラリス」
引地 奈美 氏 (写真右)

引地 私と遠藤さんが携わる「やまもとこぐまサロン」は、宮城県亘理郡山元町で毎月開催している、障がいのある人とない人が出会い、共に学び合う場です。そこで障がい児者の保護者と関わる中で、周囲の理解の大切さを実感しています。

 子どもに限らず、障がいのある人が日常生活を営む上で妨げとなる4つの〝バリア〟をみなさんはご存じでしょうか。

 1つ目は、物理的なバリアです。公共交通機関や道路における狭い通路や急勾配の道といった、移動面での困難をもたらすものです。2つ目は制度的なバリアで、前の段階で機会を奪われるもの。学校入試、就職や資格試験等において、障がいがあることを理由に受験や免許の付与を制限することなどです。

 3つ目は文化・情報面でのバリア。視覚に頼ったタッチパネル式のみの操作盤、音声のみのアナウンス、点字・手話通訳のない講演会など。視覚や聴覚に障がいのある人にとってバリアになります。

 そして4つ目が、意識上のバリアです。周囲からの心無い言葉、差別、無関心など、障がいのある人を受け入れないバリアのことを言います。精神障がいの人は何をするか分からないから怖いという偏見や、かわいそうな存在と決めつけること、相手を理解しようとせず、「なんで分からないんだ」「なんで出来ないんだ」と高圧的な態度をとることなどもそうですね。

それぞれの個性を生かしていける時代へ

遠藤 日本では、平成28年(2016)4月1日に「障害者差別解消法」が施行され、宮城県では令和3年4月に「障害を理由とする差別を解消し障害のある人もない人も共生する社会づくり条例」が施行されました。

 それによって、日常生活のあらゆる場面で、障がいのある人に対して正当な理由なくサービスの提供を拒否することや、場所や時間帯などを制限するなどの差別的な扱いが禁止されるようになりました。正当な理由があると判断した場合は、障がいのある人にその理由を説明し、理解を得るよう努めることを大切にしています。

 また、障がいのある人から、バリアを取り除くために何らかの対応を必要とする意思が伝えられたときに、無理のない範囲で対応すること(合理的配慮)が、社会全体に求められることになりました。例えば、従業員が少なく混雑している店内で、「車いすを押して案内してほしい」と伝えられた場合。「できない」と判断する前に、話し合い、障がいの特性や状況に応じて、店側の負担が重すぎない範囲でできる対応を考えるんです。

引地 社会は今、それぞれの個性を生かしていける時代へと変わろうとしている過渡期なんです。そして、役所や会社、お店だけでなく、私たち一人ひとりにもその変化が求められています。障がいのある子どもやその親御さんと出会ったとき、分からないからと避けるのではなく、正しく理解して関わろうとする姿勢が大切なんです。

 まずは知ることから始めて、心のバリアをなくしていきましょう。誰もが助け合える地域社会を目指して、みなさんと共に私たちも頑張っていきます。

『障害ってどこにあるの? こころと社会のバリアフリーハンドブック』
(発行:国土交通省総合政策局安心生活政策課)から

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【参加者の声】

 講師のお二人の話を聞いた後、他の参加者とグループで意見交換をしました。その中で、相手の特性を理解しようと努め、相手の良いところを見つけ、お互いを認め合おうという姿勢が大切なんだなと思いました。今日学んだことを、子育てや、子をもつ親御さんたちとの関わりの中に生かしていきたいです。(30代・男性)

 以前、ママ友とそのお子さんがうち以 に遊びに来たときのこと。引き出しを勝手に開けて散らかすお子さんを注意しないママ友を見て、どうして何も言わないんだろうと思っていました。発達障がいについて、私は無知だったからです。ママ友も、どう対応するべきか悩んでいたんだろうなと、今回のサロンに参加して感じました。相手を知り、相手の心に寄り添っていける自分になりたいです。(40代・女性)