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REIYUKAI
ボランティア

2022.7.30

喜んでくれた子どもたちの笑顔が何よりも嬉しかったから…

子育て支援・NPO法人職員
遠谷 幸恵(とおや ゆきえ)さん(64歳)


子どもたちに喜んでもらうための様々な企画を考える遠谷さん

 「杜の都」と親しまれる宮城県仙台市に住む遠谷幸恵さん(64歳)。子どもたちの健やかな成長を支援する地元のNPO法人に27年間所属し、様々な活動を展開している。

 児童文学を原作とした劇団の舞台やプロのピアノコンサートの公演などを主催・共催し、地域に住む親子を毎年数千人以上招待する。他にもキャンプやワークショップなどの体験活動を定期的に開催。親子で一緒に楽しめる活動から得られる実体験を通じて、豊かな感性と思いやりのある心を育ててもらいたいと取り組んでいる。さらに、子育て中のお母さん・お父さんがなんでも相談できる電話窓口や、市民センターなどを借りて毎月サロンを開いている。

 「私たちがこの活動をする理由は子どもたちの笑顔が見たいからです」と話すと、「きれいごとを言うな」と返す人もいます。ですが、仲間と一緒に活動を積み重ね、子どもたちの弾ける笑顔に出合えたときには、何ものにも代えがたい喜びがあるんです。

 そんな遠谷さんに、長年にわたってボランティア活動に取り組んできた思いと実感を聞いた。

 実は、元々は子どもが苦手だったんです。でも、29歳のときに生まれた長女・双葉が日々、少しずつ成長していく姿を見ていると、子どもはなんて愛おしいんだろう! 成長するって素敵だなと、感動の日々。娘の幸せのためには何でもしようという思いが湧き上がってきたんです。

 娘が生まれたばかりの頃に霊友会に入会したのも、学生時代からの友人に声をかけられ、娘の幸せのために何かできるのならばとの思いからでした

周りの子どもたちの幸せは娘の幸せにもつながるのだと気がついて

 遠谷さんは知人から、地域に住む親子に演劇鑑賞の機会を提供する団体(現在所属するNPO法人の前身)が主催する人形劇に誘われた。母親の影響で小さい頃から演劇鑑賞にたびたび通っていた遠谷さんは、親子で一緒に楽しみたいと、7歳になったばかりの双葉さんと鑑賞。そこで団体の詳しい活動を聞き、ボランティアとして団体の運営に関わるようになった。

 各地の劇団へ自らの脚で交渉に出向き、公演を企画。また地域に住む多くの親子を誘い、劇場に招いてきた。


当時1歳の娘・双葉さんと一緒に。双葉さんは令和元年9月に第一子を産み、幸せに暮らしている

 団体の一員としてボランティアに取り組みながら、娘と一緒に実際の活動に参加する中で、たくさんの親子に出会いました。中には、「自分の子どものことが愛せない」と深刻な悩みを抱える親御さんも……。

 双葉はこれから、地域の子どもたちや学校の先生、お友達の親御さん、多くの人たちと深く関わっていく。その人たちみんなが穏やかに暮らし、幸せな人生を送ってほしい。それがひいては双葉の幸せにもつながる

 そんな思いがふつふつと湧いてきて、ボランティアとしての使命に燃えるようになりました。

 しかし、会員からの年会費と自治体からのわずかな助成金だけでは、資金繰りが苦しい。そこで、22年前に団体の代表に就いた遠谷さんは、NPO法人の設立を目指した。同じような活動をしていた近隣の2つの団体に声をかけ、合併の交渉を進めるが、難航していた。

 そんな私をいつもそばで支えてくれたのが、導いた会員の渡辺晴江さん( 58歳)や、昨年亡くなった佐藤紀美枝支部長(享年85歳)です

 佐藤支部長は、私が「他の代表とそりが合わない! 話を聞いてくれないんです」と愚痴を言うと、耳を傾けてくれました。「つらいですね。自分には与えられた使命があるんだと信じ、人への感謝を忘れずに、頑張りましょう」と励ましてくれました。

 渡辺さんは交渉相手の団体に所属していて、仲介役として公私両面から支えてくれたのです。

 そんな私の心を揺るぎないものにしてくれたのが、弥勒山で拝聴した小谷恩師のご説法でした。自分だけの幸せを考えていたのでは、この世に生まれた義務が果たせないというお言葉を聞き、ハッとしました。

 私は子どもたちのためと言いながら、自分の思い通りにならないことが嫌で、自分の都合だけを考えて動いていたのかもしれない。それでは、誰も幸せにはなれないんだと思ったのです。

 至らない自分を改める修行に取り組みながら、平成15年(2003)には3団体の合併が完了し、3年後にNPO法人を取得。資金繰りも安定し、事業を拡大することもできました。

東日本大震災で傷ついた子どもたちの心を癒やしたもの

 平成23年(2011)、東日本大震災が発生。遠谷さんたちが、被災したある小学校を慰問したときのことだ。

 先生方に要望を聞くと、「子どもたちが笑顔になれるものを」とのこと。そこで、コメディーが得意なパントマイマーを呼びました。2人組のパントマイムは大好評で、子どもたちからは「楽しかった」「また来てほしい!」という声が……。何よりも嬉しかったです。

 先生からは、「震災に遭ってから、子どもたちは周りの人を気遣って我慢ばかりしていました。あんなに笑っている子どもたちを見たのは初めてです」との声をいただきました。自分たちがずっと取り組んできたことは間違いじゃなかった。芸術には心を癒やす力があるんだと、あらためて実感しました。

渡辺晴江さん(右)とは20年来の付き合い。なんでも話し合える間柄で、共にNPO活動に取り組んできた

 遠谷さんは60歳でNPOの役職を退き、現在は、若手や壮年の後進の育成に力を入れている。最後に、私たち誰もができる社会貢献について、次のように語ってくれた。

 電車内や街中で、子どもが泣き止まずに困っている親子を見かけると、迷惑だと顔をしかめてしまう人もいるかと思います。ですが、優しく見守ってあげることも大切ですし、笑顔で声をかけてあげることも助けになります。

 そんなほんの少しの「笑顔のボランティア」から始めてみることが、地域に暮らす私たちにとって大切なことなのだと思います。