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ボランティア

2023.9.1

この島に息づく 伝統と温かい生活を
これからも……

青年団 近藤 有朋さん(49歳)

 長崎県の五島列島で生まれ育った近藤有朋さん(49歳)は、長年、地域の青年団に所属して地元を盛り上げるために様々な取り組みを行っている。近年は青年団の団員数の減少に直面する中、近藤さんは、この島に息づく伝統文化と温かい生活を、これからの若い世代にも継承していきたいと頑張っている。

|   400年続く島の祭りを盛り上げていく青年団員

 古くはクジラ漁で栄えた港町、長崎県南松浦郡新上五島町有川郷。7月23日に、400年以上も続く伝統の「有川十七日祭り」が4年ぶりに開催された。各地区の青年団や有志が、喜劇や時代劇などの「にわか芝居」を演じて、有川港近くにある海童神社や町内各地で披露し、大勢の人で賑わった。

有川港堤防に約450発が打ち上げられた「ありかわ花火大会」

 20年以上「にわか芝居」の役者を続けてきた近藤有朋さんは、今回、西原地区の名代として「にわか芝居」の役者を指導した。当日は「にわか芝居」舞台となる山車(だし)の移動を先導。西原地区の青年団は、この日のために練習を重ねてきた『神だのみ』と題する喜劇を披露し、観客の大きな笑いを誘い、拍手があがった。

西原地区青年団の仲間と、芝居の舞台となる山車が移動する様子を見守る近藤さん(左)

 近藤さんはこの「有川十七日祭り」のほか、毎年冬に行われる「弁財天祭り」にも尽力し、青年団の仲間と一緒に住民の親睦をはかっている。さらに、船で有川港に訪れた観光客を青年団一同で歓迎するなど、活動は多岐にわたる。

 4人兄妹の長男の近藤さんは、父の浩次さん(78歳)と母の春美さん(68歳)のもと、豊かな自然に囲まれて育った少年期を次のように語る。

|   先祖が愛してきた故郷を自分たちの手で元気にしたい

 通学路の途中にある海の浅瀬に、大きなイカや魚が上ってくることがあって、よく友達と一緒に海に飛び込んで捕まえていました。それを魚屋を営む私の父や魚市場を開いている人に渡すと、お小遣いを貰えたのです。島に住む今の子どもたちにそのことを話すと、よく驚かれます。

 父は地区の自治会長を長年勤めていて、困っている人を見れば放っておけない人です。母は霊友会の教えに真剣に取り組んでいて、会員の家に足繁く通い、霊友会の行事で島の外まで出かけることもたびたびありました。そんな世のため人のためを思って行動する両親を、ずっと尊敬してきました。

 子どもの頃は、両親がいつも家を空けていることに多少の寂しさもありました。けれども兄妹や友達と遊んだり、島の人達がいつも「近藤さん家の息子さんじゃろ!」と気にかけてくれたので、温かく賑やかな環境で育つことが出来ました。

 近藤さんは13歳の時に、父親の紹介で西原地区の青年団に入団。幼い頃から親しんできた「有川十七日祭り」では、友達と一緒に「締太鼓」を叩いたり、舞台の設営を手伝った。

 16歳の時、近藤さんは理容師の道を志した。資格を独学で取得し、地元で美容院を営む母親に実地で習い、島を出て福岡県など都会の店にも働きに出た。

 近藤さんは25歳の時、人情が穏やかなこの島で、自分の理容室を開こうとUターンした。「都会に比べて人口は少なく、料金も安いので、店をやっていけるのだろうかと悩みました。ですが、福岡で出会った霊友会の先輩から励まされたり、家族からの後押しもあって決めました」と近藤さんは話す。開店当初は友人や母親の客が中心だったが、次第に地元客のみならず、他地区の住民にも親しまれる理容室になった。

 そんな近藤さんが「にわか芝居」の役者に初めて挑戦したのは、開店したばかりの頃だった。

 友達や後輩がやっていた喜劇の芝居が楽しそうで、自分もまだやったことないことをしてみようと、軽い気持ちからでした。私たちは時代劇を奉納することになったのですが、それは私が考えていたよりも本格的なもので……。祭りの数カ月前から毎晩遅くまで芝居の稽古があり、仕事をしながら続けるのが本当に大変で、「もう今年だけで十分や」というのが本音でした(笑)。

 でも、先輩や後輩たちと一緒に芝居を演じきることができ、あるお客さんからは「名演やったね!」と声をかけられ、達成感がありました。翌年以降も、仲間たちと「にわか芝居」を続けていこうと気持ちが固まり、その活動を通して他区の自治会長や住民との交流も増えてきました。

コロナ禍前の「有川十七日祭り」で喜劇の「いしづくりの教会」を披露する近藤さん(中央)。劇の内容は青年団員で考えた

|   海に親しんで生きる人たちの思い

 そうした中で、島の人たちの「有川十七日祭り」にかける熱い思いを知ったんです。このお祭りは、江戸時代の初期に海難事故が多発したことから、住民が島に祠(ほこら)を建て、「にわか芝居」を海の龍神様に奉納したことが由来です。


西原公民館に飾られているかつての「にわか芝居」の写真

 私の父のような水産業者が多いこの有川で、大切な人たちが海で命を落とさないようにと祈り、先祖代々受け継がれてきたのだといいます。

 お祭りに携わる人の熱意や伝統に心を打たれ、私はより真剣に芝居に取り組むようになりました。今、私が島に定住したばかりの若い後輩に芝居を指導するときも、そうした思いを伝え、演じる心情を伝えています。

 今までの4年間、島の行事はコロナ禍の影響ですべて中止になりました。島に帰省する人や観光客も途絶え、住民の誰もが先行きへの不安を抱えていました。

 今年の「有川十七日祭り」は、島外からたくさんの観光客が訪れ、久しぶりに里帰りをした人も多くいました。伝統を広く伝えていくために、そして私たちの手で地元を元気に盛り上げていこうと、青年団一同はより一層稽古に励みました。

 最近は、島に戻ってきてくれた若者の相談に乗ったり、友達の伝手(つて)で仕事を紹介したりと、居場所づくりにも取り組んでいます。私は、この島に息づく伝統文化と温かい人々の生活を、これからも絶やしたくはありません。島の活気を取り戻せるように、青年団の若い仲間たちと一緒に、これからも精いっぱい取り組んでいきます。


<社会貢献Tips>

実は身近な海洋ごみ問題

 世界中で増え続けている海洋ごみの中でも、過半数を占めるプラスチックごみ。自然界で分解されづらく、海洋生物が餌と間違えて食べてしまったり、体に刺さってしまったりと、海の多様な生物の命を脅かしています。

 海洋ごみの約8割は、私たちの住む街から川を伝って流れ出たもの。ポイ捨てなどのモラルの問題だけでは片づけられない社会の課題である一方、私たち一人ひとりが問題意識をもつことが大切です。無駄なごみを出さない、道ばたに落ちたごみを見過ごさずに拾って捨てるなど、一人ひとりの小さな行動が、大切な海を守ることにつながります。