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ボランティア
2022.10.29
地域の子どもたちの「第二の家」になれるように……
学童保育所・支援員 山口 忠和さん( 41歳)
師岡学童保育所の施設の前で。80人以上の小学生がここに通っている
| 地域の子供たちを育む学童保育所
学童保育所は、共働きなどで日中に親が家にいない小学生の子どもたちが、放課後や長期休み中等にも安心して過ごせる場所だ。子どもたちは大人の支援員に見守られながら、宿題をしたり、友だちと遊んだり、様々な課外活動を通じてのびのびと育っていく。
山口忠和さん(41歳)は、神奈川県横浜市にある師岡学童保育所の支援員のリーダー。地域の親子から信頼を寄せられている彼に、子どもたちとの関わりについて聞いた。
師岡学童保育所は町内会や民生委員、保護者の方々といった地域のみなさんのご厚意に支えられて運営しています。私たちは、ここが子どもたちにとって居心地の良い「第二の家」となれるように、子どもたちと日々関わっています。
そう話す山口さんは、物心ついた頃から、弥勒山や支部のつどいで妙一会の活動に参加していたという。
妙一会の担当としてお世話をしてくれたお兄さんやお姉さんは、明るくて面白くて、私の話をしっかりと聞いてくれました。本当の兄姉のように気兼ねなく過ごせるので、みんなで企画するバーベキューや、秋の芋煮会、キャンプはいつも楽しみでした。
高校生になると、今度は私が妙一会の子どもたちのお世話をするようになりました。一緒に遊んですぐに懐いてくれる子もいれば、人見知りをして私を避けてしまう子もいました。
私は、自分を担当してくれたお兄さん、お姉さんを見習い、子どものどんな言葉にも耳を傾けていきました。子どもはとても素直。私が精いっぱい話し相手になったり、ゲームなどで一緒に遊んだりすると、少しずつ通じ合えるんです。
親しくなれた子どもから感謝の手紙をもらったり、私と会いたいからと妙一会のつどいに来てくれたりすると嬉しくて……。いろいろな子どもたちと出会えることが楽しく、また、人と人のコミュニケーションについて学ぶことがたくさんありました。
様々な学年の子どもたちと交流する山口さん。子どもたちから「やまちゃん」と呼ばれ親しまれている
| 将来に迷ったとき、関わってきた子の笑顔が思い浮かんだ
高校を卒業してから、美容院で働くようになりました。でも、どこかモヤモヤとした気持ちを抱えるようになって……。私のやりたいことは違うんじゃないかと、転職を考えたのです。そのとき思い浮かんだのが、妙一会の子どもたちとの関わりだったんです。
他人と打ち解けるのが苦手な子どもに寄りそって、心を開いてくれたとき。髪をおしゃれに切ってあげると喜んでくれた男の子の笑顔。そのときの喜びがずっと心に残っていたのです。
親御さんたちから、共働き世帯での子育ての苦労や、待機児童の問題について伺ったこともありました。
私は、子どもたちを見守り、深く関わり合いながら、笑顔になってもらえる仕事をしたいのだと気づきました。
この地域に住む1人でも多くの親子を支えたいと思い、24歳のときから師岡学童保育所で働き始めたのです。
山口さんが保育所に転職して数年、学童保育の一環として男子にダンスを教えるようになった。きっかけは、山口さんが同保育所の女子のダンス活動を見て、その華やかさと成長していく姿を目の当たりにしたからだ。
山口さんは、青年部の仲間にダンスを教えてもらったり、振り付けの映像を集めたり、一からダンスを学んでいった。そして16年前に「男の子ダンサーズ」として結成。現在は12人の男子が集まり、山口さんの指導の下で週3回練習している。
親御さんたちは、衣装の洗濯や練習の撮影などに快く協力してくれています。子どもたちは自分のダンスの練習だけでなく、うまくできない所は仲間と相談し、お互いに教え合っています。
そうする中で、ダンスの楽しさを知った子が新しい子をチームに誘うようになりました。友だちの輪が広がっていくのを見ると嬉しくなります。
平成22年(2010)に初めて「三者・生き方フェスティバル」に出演しました。「男の子ダンサーズ」はそれまで学童保育所内のキャンプやバザーなどで発表していましたが、外部の団体のイベントで披露するのは初めて。子どもたちは緊張していましたが、会場に集まった人は温かく迎えてくれて、ステージは大成功でした。
それからも地域の「三者」の舞台には毎年出演し続けています。この舞台で全力を尽くすことが「男の子ダンサーズ」の目標の一つです。
第13回「三者・生き方フェスティバル」のステージに立つ「男の子ダンサーズ」のメンバー
| 保育所を卒業した子どもたちと結んだ確かな絆
「男の子ダンサーズ」に所属していた子たちの中から、児童養護施設の教諭や地元の高校の先生になった子もいます。ある親御さんから、「頼りになる山口さんの姿を見てきたから、教職の道を選んだんですよ」と聞いたときは、照れくさい気持ちになりました。
また、あるOBの男の子はひょっこりと保育所に顔を出しては、「やまちゃん(山口さんの愛称)を放っておけないから!」と、支援員の仕事やダンスの練習を手伝ってくれています。
子どもたちがここで過ごした日々が良い思い出として残り、「第二の家」になれたのであれば、これ以上の喜びはありません。
美容師の経験を生かして、「男の子ダンサーズ」のメンバーの髪のスタイリングをする山口さん
笑顔を浮かべた山口さんは、私たち一人ひとりがこの社会でできることについて話してくれた。
コロナ禍以降、子どもたちが楽しみにしていた行事や、のびのびと遊び回る当たり前の光景は、地域から失われていました。子どもたちは自分なりに状況を受け入れているようですが、同時に大切な、人と人の温かい繋がりも薄れていったように感じます。
こうした世の中で「社会のために何かしなければ……」と肩肘を張らずに、自分の経験を生かして、できることから始めてみる。その積み重ねが、みんなの幸せに繋がっていくのではないでしょうか。