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REIYUKAI
ボランティア

2023.2.28

孤独に悩む親子の声を聞き
生きる素晴らしさを伝えたい

ピアノ教室講師 伊藤晶子さん(66歳)

小学5 年生の生徒に『かえるの合唱』の楽譜の読み方を教える伊藤さん

 心が一番安らぐはずの家庭や家族が、様々な原因でかみ合わなくなるケースは数多い。高齢になった親の介護や生活の悩み、貧困、夫婦仲の亀裂。行政の支援も届かず、先の見えない不安に苦しんでいる人は少なくない。私たちにできることはないのだろうか?

 伊藤晶子さん(66歳)は、15年前から経営するピアノ教室を通じて、地域に住む親子と深く関わっている。生徒と先生の関係に留まらず、心から人を思って支えている彼女に、話を伺った。

|   世代の違う生徒たちと深く向き合う

 埼玉県三郷市の住宅街に「伊藤ピアノ教室」はある。レッスンは週4日。近所の子どもたちをはじめ、幅広い世代の生徒が通っている。自分を表現する楽しさを実感してもらうことに加え、伊藤さんが大切にしているのが、生徒一人ひとりと深く向き合うことだ。

 例えば、レッスン中に何か元気がなかった子や、子どもを迎えに来られた親御さんの顔がどこか暗いときには、「最近、何かありました?」と尋ねます。

 信頼関係を築けていると、「先生、実は… …」と語られることも多いのです。クラスの人間関係の悩みや、家族がバラバラで崩壊してしまいそうな近況など、いろいろなことを話してくれます。どんなことにも耳を傾け、微力ながらも支えられればと思います。

|   人は、この教えで変わることができる

 北海道虻田郡で生まれ育った伊藤さんは、ピアノ講師の伯母の影響で5歳からピアノを習い始めた。

 多忙な両親のもとで育ち、弟と2人で留守番をする毎日。母親の八重子さん(92歳)からは褒められた記憶がほとんどなく、気持ちはすれ違っていたという。

 私が高校に進学した頃、母は脳腫瘍で倒れた父のためにと霊友会に入会。私が音大を卒業して地元の音楽教室で働き始めた頃には、母は導きにも歩くようになりました。

 母は仕事の合間をぬって会員のお世話をしていく中で、変わりました。私がやることなすこと、着る服にまで何でも反対ばかりして過干渉だった母が、私の意志を尊重してくれるようになってきたのです。

 少しずつではありますが、母と和やかに過ごせるようになり、この教えで人は変われるんだと、私も真剣に霊友会の教えに取り組むようになりました。

 29歳で結婚したのを機に、埼玉県三郷市に移住。まわりの人に教えを伝えると、自分と似た境遇の人が多かった。会員のお世話をしながら、娘と息子の子育てが落ち着くと、夢だったピアノ教室を自宅に開設し、口コミで生徒が増えていった。

「温かく丁寧に教えてくれる伊藤先生のおかげで、すごく上達しました」と評判は上々だ

 ピアノの技術を教えるだけでなく、レッスンの合間で生徒との交流を大切にしました。そうすると、世間話ではない、悩みや本音を話してくれるようになってきたんです。

 お孫さんが通っている縁で3年前から習い始めたKさんもその一人です。彼女は教室の近所で息子さん夫婦と同居しています。

 レッスンが一段落した後に、私がKさんにコーヒーをお出しすると、「ここにいるとホッとしますね。先生も、ご主人も温かくて」と笑顔で話してくれます。ある日、Kさんから息子さん夫婦と折り合いが悪いということを聞きました。

 Kさんは、「息子夫婦にいじめられているんです。家のことを私に全部させて!」と。しかし、息子さん夫婦と話すと、「母は被害者意識が強いんです。そちらに迷惑をかけていませんか?」と逆に心配されました。お孫さんは、「家の中で、またケンカがあってさ」と私にこぼすのです。

 お孫さんはそんな環境で将来の進路についても家族に相談しづらくて、一人で悩み練習に身が入らないようでした。家族の不和で傷つくのは、間に挟まる子どもたちなのです。

 Kさん家族の話を聞いていると、私はかつて、母とうまくいかなかった頃のことを思い出しました。私は霊友会の教えで、母との関係を変えることができたとKさんに伝えました。

 「私と母の関係が変われたように、家族が心穏やかに過ごせるように、先祖供養の教えを一緒にやってみませんか?

 息子さん夫婦や、お孫さんにも、幸せになってもらいたいんです」と。

 Kさんは、「そうね……」と考え、「先生はいつも私の話を真剣に聞いてくれますから、私は先生のお人柄を信じます」と入会したのです。

 後日、息子さん夫婦とお茶をし、Kさんと一緒に教えを実践することを伝えました。息子さんは頭を下げて、「母は先生のことをすごく信頼しているんです。どうかよろしくお願いします」と言ってくれました。このご家族に円満に暮らしてもらいたいと願っています。

 先祖供養を通して感じるのは、命の大切さです。身の回りで困っている人を、私たちは放っておいていいはずがありません。

 この教室では、誰もがピアノを楽しめるように丁寧に指導し、上達する喜びを感じてもらいたいと思います。そして、ピアノを通じてつながった縁を生かし、ささやかな思いやりを地域に広げることで、孤独に悩む子どもや親御さんの助けになりたい。霊友会の教えを伝え、一軒でも多くの幸せな家庭を増やすことにつなげたいと思っています。

地元の老人ホームで暮らす母の八重子さん(右)を見舞う伊藤さん。八重子さんの好物を差し入れし、思い出話に花が咲く