社会を学ぶ

 国連によると、年間800万トン(重さにして、ジャンボジェット機5万機分)のプラスチックごみが海に流れ込んでおり、その総量はすでに1億5,000万トンを超えるといわれていることをご存知でしょうか。新聞やテレビのニュースでプラスチックごみを誤って食べたクジラやウミガメの写真にショックを受けた方も多いと思います。世界中で使われたプラスチックがごみとなって海へ流れ込み、海洋汚染を引き起こしているのです。

 世界環境を脅かしているプラスチックごみ問題。美しい地球、そして安全な環境を未来の世代に残すために私たちは何ができるのでしょうか。

香川県「さぬき瀬戸」パートナーシップ清掃活動

 世の中の問題を他人事にせず、自分にできることから社会に貢献していく。そんな青年を目指すためのコーナー。  先月紹介した徳島県Myおせっかい推進委員会のアドプト清掃活動をきっかけに、四国ブロックでは環境問題への取り組みが広がりました。香川県では、平成24年から行政と県民が協力して海岸環境を守る「さぬき瀬戸」パートナーシップ事業に参画しています。昨年11月の活動では、事前に青年部執行部が海洋プラスチックごみ問題の現状について調べてきたことを発表し、みんなの清掃活動に一層熱が入りました。活動に参加している青年たちの声とともに紹介します。


青年部執行部 地域活動推進部 四国ブロック部長 内田朋子さん

 私たちは10年前から、「さぬき瀬戸」パートナーシップ清掃活動として、坂出市にある沙弥海岸の清掃活動を続けてきました。年に数回、子どもから大人まで、家族や友達を誘い合ってたくさんの仲間たちと一緒に汗を流す恒例行事です。

※手作りの資料で海洋プラスチックごみ問題の説明をする内田さん

 コロナ禍で規模を縮小していましたが、昨年11月28日の活動は、久しぶりに大人数で集まってできることに。私はこの機会に、活動の意義をあらためて見直してみようと思い、最近よく耳にする海洋プラスチックの問題を調べてみたんです。

 すると、びっくりしました。知れば知るほど、いかに大きな問題かを突き付けられたんです。単なる恒例行事にしてはいけない。現実を学び、目的意識をより強くもたないと! 活動に臨む姿勢がこれまでとは大きく変わりました。

 当日、調べてきたことを手作りの資料にしてみなさんの前で発表しました。そしていざ、清掃を始めてみると……。以前は大きくて目立つごみに目がいっていましたが、よく見てみると、細かく砕けたプラスチックごみや、絡まって取れない繊維状のごみがいかに多いか気づきました。事前に学んだ「海洋プラスチックごみは回収が難しい」ということを体感したんです。

 参加したみなさんも、「内田さんの話を聞いて、すごく意味のある活動だと思い直した」と言ってくれ、いつも以上に精力的に動いてくれました。みんなの意識が変わったんです。

 海洋プラスチックごみは、規模が大きすぎて、一人の行動でどうにかなる問題ではありません。でも、活動を終えた約80人の生き生きとした表情、「たくさん集まったよ~!」と元気いっぱいにご み袋を見せてくれた子どもたちの笑顔を見たらうれしくて……。やっぱり、行動することが大切ですよね。この思いをもっと広げていけるように、周りの人にどんどん声をかけて、みんなで取り組んでいきます。

※一つ一つ丁寧に拾ってきれいにするぞ!


※細かく砕けたプラチックごみがたくさん

 増え続ける海洋ごみ。海岸に打ち上げられた「漂着ごみ」、海面や海中を漂う「漂着ごみ」、海底に積もった「海底ごみ」の総称のことだ。その中で最も問題なのがプラスチックごみ。毎年、世界で約800万トンが新たに流れ出ていると言われている。安価で、安全で、加工しやすい、私たちの生活を便利にするプラスチックだが、自然界では分解されにくく、400年以上海の中を漂う可能性もあるという。

 海の生物への影響は甚大だ。餌と間違えて食べてしまったり、繊維状のごみが体に絡まって傷付き、死んでしまうことが日常的に起きている。海の生態系にさまざまな悪影響を及ぼしているのだ。

 そんな海洋ごみは、一体どこから発生しているのか。なんと、その7~8割が、私たちの暮らす街から川を伝って流れ出たものだという。日本コカ・コーラ社と日本財団が2019年に行った共同調査によると、その要因として、ごみの集積過程でこぼれ落ちたり、災害時に使用された土嚢(どのう)や農業資材の経年劣化で流出するケースも確認された。ポイ捨てなどのモラルの問題だけでは片付けられない社会の課題であることが分かってきたのだ。

 「2050年には魚よりごみの方が海にあふれる」という予測もあるという。海の豊かさを、未来を守るために、私たち一人ひとりが問題意識をもつことが大切だ。

学ぶだけじゃ得られぬ面白さ!〜活動に参加して感じたこと〜

「ありがとう」がうれしくて…


※香川県  浅野玄聖 さん 20 歳

 小学生のとき、親に連れられて初めてこの活動に参加しました。成長するにつれて、友達との遊びや自分の予定が最優先になり、徐々に足が遠のいていったんです。

 昨年、内田さんやほかの先輩たちから久しぶりに参加しないかと誘われ、会合に行ってみることに。みんな明るくて、話していて楽しいし、なんだかすごく温かい雰囲気でした。「一緒に手伝ってほしい」と言われ、準備や企画から関わるようになったんです。

 うれしかったのは、些細なことでも感謝されることです。企画会合が終わってすぐ、必要な情報を調べてきたぼくに、「ほんまにありがとう」とみんなが声をかけてくれました。たった一言なのに、こんなに良い気分になるんやな。そう思って、ぼくも職場で積極的に「ありがとう」と言っていこうと思いました。

 はじめは心の中で思ってもスッと言葉が出てこなくて……。でも、日々心がけていると、少しずつ言えるようになっていきました。すると、以前は他の人の仕事が遅いとイライラすることが多かったのですが、穏やかな気持ちで相手と接することができるようになり、仕事がスムーズに進むようになったんです。

 清掃活動も、ひとりで黙々とやるより、みんなでワイワイ話しながら、お互いに「ありがとう」と声をかけ合えるから楽しいんだなって思います。

 今回、内田さんが調べてくれた海洋プラスチックごみの問題を聞いて、自分たちの活動が世の中の役に立つんだなと分かって、さらにやる気が湧いてきました。友達を誘って、みんなで楽しく活動していきた

※運営メンバーによるプレ清掃活動(10月)

※当日、天候にも恵まれ、多くの仲間が参加

※みんなの力でこんなに多くのごみが集まった!

大切な友達、大切な地域のために


Myおせっかい香川県推進委員 澤田真貴さん 27 歳

 私は10年前の第1回から参加しています︒通りがかりの人がふらっと一緒にごみ拾いをしてくれることもあるくらいオープンな活動で、地域住民と一緒にできるのが良いところだなと感じています。

 今回、本番を前に当日の運営スタッフでプレ清掃活動を10月に行うことになり、そこに高校からの友達を誘って一緒に参加しました。普段から、「気軽に会おうって誘えるのは真貴しかおらんわ~」と言ってくれるほど仲良しで、私にとって大切な友達。でも最近、私が結婚を機に大阪に引っ越して、すぐに会える距離ではなくなってしまったので、彼女のことがずっと気がかりだったんです。だから、友達の輪を広げてほしい、霊友会の仲間たちとつながってほしいと思って声をかけました。

 楽しんでくれるかな。みんなと仲良くなれるかな。ドキドキでしたが、一緒にごみを拾って、「ええ運動になったわ~」と笑顔で言ってくれた彼女。内田さんたちとも仲良くなれて、私もひと安心でした。香川の仲間たちにも助けてもらいながら、これからもこまめに連絡したり、会う機会をつくろうと思います。

 いつも清掃活動をするたび、きれいになった海岸で遊ぶ子どもたちの姿を見て、大好きなこの光景をずっとずっと残していきたいな、という思いになります。大切な家族や友達が、いつまでも笑顔で暮らせるように。豊かな海を守るためにも、いろんな人に声をかけていきます。