社会を学ぶ

 アダプト・プログラムは、市民と行政が協働で進める清掃活動をベースとしたまち美化プログラム。1998年、徳島県神山町で初めて導入。以後、日本全国で400以上の自治体(都道府県・市町村)で導入され、500以上のプログラムが稼働している。
みなさんの地元にもアダプト・プログラムがあるかもしれない。チェックしてみよう!

 世の中の問題を他人事にせず、自分にできることから社会に貢献していく。そんな青年を目指すためのコーナー。今月は拡大版をお届けします。
 始めに紹介するのは、徳島県の会員たちが行っている、アドプト清掃活動です。SDGs(エス・ディー・ジーズ)の目標にもあるように、昨今、環境問題への取り組みは世界的な関心事です。徳島では、16年前から、行政と連携して自分たちが暮らす地域の環境問題に取り組んできました。
 青年部執行部の山田案朱沙さんと、現在はOGとして青年たちと関わる川原夕季さん。立ち上げメンバーのお二人に、話を聞きました。


※地域活動推進部・四国ブロック副部長 山田案朱沙さん


※川原夕季 さん

徳島県アドプト清掃活動

「困っていることは何ですか」そこからすべてが始まった

山田 16年前、霊友会青年部では、「人に地球に役立つ行動を起こそう!」と、全国で一斉に奉仕活動を行う「ドットカム・DAY」を立ち上げました。私たち徳島県も実行委員会を開き、自分たちが何をしたいかではなく、何が地元の人に喜んでもらえるか、地元のニーズを知り、それに応えていこう!と話し合ったんです。そして、「困っていることは何ですか」と県や市に聞いたところ、紹介されたのが、徳島市内を流れる大の河川敷でした。

川原 そこは粗大ゴミや一般ゴミの違法な廃棄場所になっていたんです。私たちも普段、近くを車で通る場所なんですけど、土手の下に降りないと様子が分からないので気が付きませんでした。

山田 実際に現地を見に行って、みんな絶句。500メートル以上に渡って、生活用品、テレビや布団など、あらゆるゴミが捨てられていました。住民だけでなく、市外からも川釣りなどを目的に訪れる人が多い場所で、ゴミを捨てていく人が後を絶たない。県や市も、「状況は把握しているけど手がつけられない」状態だったそうです。

川原 「ここをきれいにするのは、とても1日では無理だ」と、壮年の人たちにも応援を頼み、まずは河川敷を覆っていた草の刈り取りや粗大ゴミの撤去などから始めました。そしてドットカム・DAYのチラシを作り、友達や職場の同僚に参加を呼びかけたり、地域の家々を一軒一軒回ってPRしました。

山田 チラシ配りは印象に残っています。私は、見知らぬ人に声をかけるのが本当に苦手で……。インターホンを押しても、内心は「出てこないで」って思っていました(笑)。でも、みんなで「ぜひ参加してください」「地域をきれいにしましょう」と声をかけていく中で、当日参加してくださった人が何人かいたんです。うれしかった。勇気を出して良かったなと思いました。

川原 ドットカム・DAY当日、ゴミを集めやすいようにと率先して段取りから関わってくれた人。参加者の駐車場を提供してくれた人。ジュースの差し入れをしてくれた人までいて、本当にありがたかったですね。自分たちの手で、自分たちの住む町をきれいにして、とても清々しい気分になりました。清掃後のつどいの中でそんな感想を話し合ったのを覚えています。

山田 自分自身の意識もすごく変わりま した。道端にゴミが落ちていたら拾うようになったり、リサイクルや環境問題に興味をもって調べるようになりました。実際に自分の体を使って行動したからこそ、そう思えたんだと思います。

ゴミを「拾う」人から「捨てない」人を増やす活動へ

川原 ですが残念なことに、ゴミを捨てる人は後を絶ちませんでした。拾っても拾っても、捨てる人がいるかぎり根本的な解決にはならない。ゴミを「拾う」人から「捨てない」人を増やすため、根気よく続けていくしかない。それから毎年、事前の草取りも含めて年に何回も活動を重ねていったんです。

山田 私も友達に声をかけ、参加してくれる人も少しずつ増えていきました。また、清掃活動後のつどいでは、ゴミの分別やリサイクル、環境汚染をテーマに自分たちで調べてきたことを発表しました。清掃活動を特別な1日で終わらせず、毎日の生活の中で意識してできることを実践しよう!と呼びかけていったんです。
 さらに、「徳島県OURリバーアドプト事業」に、「霊友会青年部あわっ子クリーン隊」として団体登録したのも大きなことでした。これは徳島県内の団体や企業が、年3回以上、100メートル以上の河川清掃を実施する制度です。私たちは大松川の河川敷500メートルから始まり、数年後には徳島縣護國神社の周辺や遊歩道も追加し計1000メートルを清掃区間に。その場所に「アドプト」の看板を掲げることで、より多くの人の目に留まり、私たちの活動を認知してもらうきっかけになりました。

川原 活動を始めて17年目。今では大松川沿いにいくつかお店が立つようにもなって、「きれいになったね」「変わったね」と、清掃活動に参加している友達や職場の同僚もやりがいを感じています。
 昨年から、コロナ禍のため参加人数を制限しての清掃活動にせざるを得ない状況になりました。草刈りすら思うように進まず、次第にゴミが目立ち始め、心が折れそうになっていました。そんな中、感染拡大が落ち着いてきた今年10月の活動日。参加者が増え、久しぶりに対面できた仲間と一緒に汗を流していると、すごく心強くて……。自分一人の力は小さいけど、仲間と一緒ならもっとできるはずだと勇気が湧いてきたんです。
 まだ、ゴミを捨てる人がゼロになったわけではありません。これからもみんなと力を合わせ、活動を続けていきます。

山田 さらにこれからは、SDGsなど世界的な規模でいろんな取り組みが必要とされる時代ですし、今の活動に留まらないように視野を広げていきたいです。
 自分たちもさまざまな社会の問題について詳しく調べるのはもちろん、「社会を学ぶサロン」で専門家の話を聞いて社会のニーズをつかみ、必要な活動を生み出していく。行政や他団体とも積極的に連携を図り、より多くの人に届く活動を一緒につくっていく。アドプト清掃活動で培った経験を生かして頑張っていきます!


※今から16年前当時の大松川の様子(2005年)


※4月29日「ドットカム・DAY」で清掃活動をする青年たち(2006年)


※「アドプト」の看板は道行く人、車で通る多くの人の目に触れる(2011の清掃活動)

【アドプト制度って?】
「アドプト」とは、英語で「養子」にするの意。地元企業や住民が、地元の道路・河川敷・海浜・公園などの公共の場をわが子のように面倒をみるという、アメリカ生まれのボランティア制度だ。住民(企業)と行政が助け合いながら地域をきれいにするこの取り組みを、徳島県は全国に先駆けて採用した。「徳島県OURリバーアドプト事業」は平成13年9月に発足している。