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ボランティア

2023.6.1

どこまでも人を思う。
喜んでもらえることが一番

麺類製造業者代表 石川孝志さん(74歳)

工場で出来上がった生ラーメンを、包装機で一つずつ包んでいく石川さん。毎朝、できたての麺が地元の飲食店や各地の取引先に出荷されていく

 石川孝志さん(74歳)はオホーツク海に面する北海道紋別郡湧別町で、地元の素材を生かした製麺業を営んでいる。その傍ら、各地の福祉団体へチューリップの球根を贈呈したり、地元のNPO法人に自家製麺を無償提供するなど、様々な慈善事業を行う。

 生まれ育った町への恩返しと、人への思いやりを形にしている石川さんの心意気をうかがった。

|   こだわりの自家製麺をつくる傍らで慈善事業に取り組む

 石川さんが代表を務める「アサヒ食品工業株式会社」は創業71年。事務を務める妻のミサヲさん(78歳)や従業員たちと力を合わせて、ラーメンやうどんなどの乾麺・生麺作りに取り組む。地元北海道産の小麦や温泉水を使ったこだわりの麺類を全国各地に卸し、香港のスーパーにも販路を広げている。

 そんな石川さんは、様々な慈善事業にも積極的に取り組む。

 霊友会館北見で開催されているチャリティーバザーに、10年以上前からラーメン店を出店しています。売り上げはすべて「ありがとう こだま 基金」に寄付させていただいております。

地元のNPO法人を訪問し、「たらばがに風味ラーメン」を提供。職員や利用者からは、「この前に頂いたうどん、おいしかったです!」と温かい声をかけられた

 また6年前から、チューリップの球根を関東や九州などの福祉施設に寄贈しています。きっかけは、長年お世話になっている関東に住む支部長が、私を訪ねてきたときのことです。

 地元の公園では毎年春に、約200品種70万本のチューリップが咲き誇るチューリップフェアが開かれます。私たち自営業者も観光客を出迎えるために、行政と連携して飲食店を出店します。フェアが終わると球根は堀り上げられ、乾燥します。

 秋には地元の人達と協力し、公園での植え替え作業に取り組みます。余った球根をいただくことがあり、自宅で栽培していたところ、支部長から「定期的に慰問している福祉施設に綺麗なチューリップを寄贈したい」と言われ、いくつか球根を持ち帰ってもらったのです。

 寄贈した福祉施設からは、お礼の手紙がたびたび届きます。「球根を植えながら、子どもたちと楽しく交流できました」「どのように咲くのか、春が待ち遠しいです」という声を聞くと、嬉しいものです。紋別の地に咲く色とりどりのチューリップの美しさを身近に感じてもらえればと思い、今も定期的に寄贈を続けています。

湧別町の公園で美しく咲くチューリップ

球根を贈呈した福祉施設から届いたお礼の手紙

 また同じ頃に、障がいのある人たちの生活を支える地元のNPO法人の立ち上げに携わりました。幼い頃から近所に住む知り合いで、長年行政に関わってきた方が発起人です。彼が勉強のために、約100キロ離れた北見まで足繁く通っている姿を見ていると、私も力になりたいと思ったのです。

 石川さんはNPOの運営を助けるため、施設の農園で栽培された菊芋を練り込んだうどんを試行錯誤の末に開発。NPOでの販売も手伝っている。菊芋の豊かな風味や、血糖値の上昇を抑える効能が口コミで広がり、購入者が増えているという。

 さらに、自宅の畑で採れた菊芋や自家製麺を、このNPOや地元の特別養護老人ホームなどに無償で提供している。「私は大それたことはできませんが、自分にできることで障がいのある人や困っている人のお役に少しでも立てると嬉しいですね」と、石川さんは語る。

NPOと協力して開発した菊芋うどん

北海道産の小麦と温泉水を練り込んだ自家製麺。つるりと喉ごしが良く味も深い

|   「見返りもないことをよく続けられるね」という声も

 石川さんが霊友会に入会したのは20歳のとき。妻のミサヲさんから導かれた。東京で料理人の修行を積みながら毎日お経をあげ、青年部活動にも参加した。

 霊友会の仲間たちはいつも他人を思いやり、自分にできることを探し、少しでも人の力になれるように真剣に行動していました。私も妻も弥勒山修行に参加したり、会員の家に足を運ぶ中で、人を思うこの教えが心に浸透していったように感じます。

 石川さんが家業の製麺業を継いだのは31歳のとき。東京で培った料理人としての知識と経験を生かし、事業を着実に軌道に乗せていった。

 大きな注文が突然キャンセルされてしまったり、会社の経営が落ち込んだときも、妻や従業員は私を信じ、支え続けてくれました。苦労はありましたが、今思えば、先祖がいつも私たちを見守ってくれていたような気がしています。

 毎日先祖に合掌し、日々健康で無事に勤められていることに感謝します。そして仕事では、自分がやりたいことだけではなく、相手に喜んでもらえることはなんだろう?と常に思いを巡らせるようにしています。

 そう話す石川さんは、74歳になった今も、毎朝早くから工場で従業員たちと一緒に、丹精を込めて麺を作る。そして慈善事業を続けていく。

製造された麺のしなやかさを確かめる石川さん

 人からは、「この不景気で、見返りもないことをよく続けられるね」と言われることがあります。しかし見返りを求めず、どんなときも謙虚に、人の役に立つ行いを実践し続ける。そこから生まれた多くの人とのつながりは、かけがえのないものです。

 みんなが幸せに生きるために一番大切なことは、どこまでも人を思いやることだと信じています。私もまだまだこの取り組みを続けながら、これからの日本を担う青年や後輩たちに、そのことを伝えていく決意です。