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ボランティア
2023.7.1
人を支え続けると決めたから
障がい者福祉ボランティア 岸本 晃典さん(62歳)
| 「生まれてきて良かった」誰もがそう思えるような社会に
障がいのある人の福祉活動に長年取り組んできた岸本晃典さん。働き盛りの47歳のとき、事故で足が不自由になり、それまでの生活は一変した。「人の役に立とうと思って頑張ってきたのに、どうしてこんな目に遭うんや?」。やり場のない怒りもあったという……。
今後の社会福祉活動について相談されたときは、相手の気持ちをしっかりと受け止めることを心がける。時折お笑いのコントのようなユーモアも交えて会話を交わす
| 働き盛りのとき、突然、足に障がいが…
大阪湾に面するベッドタウン、大阪府堺市に住む岸本晃典さん(62歳)。彼は霊友会が支援する福祉団体「三者の会」で青年時代から障がい者福祉に携わってきた。現在は「三者の会」推進委員会の代表であり、地元の「さかいボランティア連絡会」の中区で副会長も務めている。
岸本さんは母の代からの霊友会会員。福祉活動を始めたのは23歳のときで、同じ支部の先輩に誘われて、当時始まったばかりの弥勒山「三者のつどい」に参加したのがきっかけだった。
弥勒山の凄い活気を今でも覚えています。自分で手作りした立派な名刺を配り、たくさんの人と楽しく交流する障がいのある人。普段は見たことのないような笑顔を見せていた支部の先輩。そして、障がいのある人が自分の言葉で語る体験談―。そのすべてが私の心に深く残ったのです。
その後も「三者のつどい」に奉仕者として参加し、障がいのある人やその家族が、人生を精いっぱい生きる姿に励まされてきたという岸本さん。地元の三者の会や福祉活動にも積極的に参加してきた。
しかし平成20年(2008)、思いも寄らぬ悲劇が岸本さんを襲った。地元の祭りで神輿を担いだ際に事故が起き、頸椎を損傷。足に麻痺が残ったのだ。なんとか歩行はできるものの、塗装工として働いていた勤め先は退職せざるを得なかった。
その後、できる範囲のアルバイトを始めたが、障がいに対する理解不足もあり、人間関係にも苦しんだ。岸本さんは語る。
「人の役に立とうと思って、三者の会の活動も頑張ってきたのに、どうしてこんな目に遭うんや?」と、やり場のない怒りを感じていました。
ですが、毎日お経を真剣にあげていると、ふと、職場での自分の姿を振り返ることがあります。そして、未熟児だった私を見守り、元気に育ててくれた母。今も気にかけてくれる家族や友人のことを思い出すんです。私は少しずつ、障がいがあっても前を向いて生きていこうと思うようになりました。
そんなとき、地元の情報誌を読んで、「堺市障害者自立支援協議会」の存在を知りました。そこの集会に参加すると、重度の障がいがある大学教授と意気投合。社会福祉を専門に研究する教授と親しくなるにつれ、障がいを抱えた自分もできることを探したいと思えるようになったのです。
私は教授や友人、行きつけの店と相談し、障がいがあっても入りやすい店だと店頭に示すシールを考案。また、車いすの介助ブレーキを使いやすくお洒落に改良したり、町のバリアフリー化の提案にも取り組みました。
私は障がいを抱えてから、見える景色が変わりました。当たり前のことですが、障がいとは毎日必ずつき合わなければいけません。日常ががらりと変わり、周りの人の視線や、街中のちょっとした段差も大きな壁になります。障がいのある人の中にはそれがつらくて、家に閉じこもってしまう人もいます。
ですが私は、そんな社会にはしたくないんです。幸せに生きる障がいのある人が周りの人を明るくする光景や、みんなが手を携えて生きていく素晴らしさを、「三者の会」の活動で知っているからです。
障がいを抱える前の平成18年(2006)、弥勒山「三者のつどい」に奉仕者として参加した岸本さん(左)
| 障がいのある人の自立のために地域のボランティアと連携して
今、岸本さんは、誰もが幸せに暮らせる町づくりのため、日々、今の自分にできることを実践している。
岸本さんの地元にある、ボランティア団体同士の定期交流会や普及活動などを行う「さかいボランティア連絡会」。岸本さんは約20年前からいずみ阪南「三者の会」の代表としてこの連絡会に所属している。今年から中区の連絡会の副会長にも就任した。
今、連絡会には堺市全体で200を超えるボランティア団体が所属し、子ども食堂を開いている人や、防災、健康啓発など、様々な活動をしています。
定期交流会では、それぞれの団体活動の現状や助成金の活用方法などを報告し合い、グループワークで率直に意見を交換しています。ボランティアの人員不足や高齢化、コロナ禍による活動の停滞、若者への啓発など、課題は尽きません。
月に何度会議を開いても議論が進まないこともあります。そんなとき、私が仕切り直して、テーマを具体的に見直したり、社会福祉専門の講師を招いて客観的な意見を伺います。しんどいときもありますが、いつか大きな成果につながると信じて、私たちは共に取り組んでいます。
人に必要とされていると、生きる力が湧いてくると実感を話す岸本さん。今年の弥勒山「三者のつどい」にも参加した彼は、これから取り組んでいきたいことを次のように語った。
今回のつどいで出会ったダウン症の青年は、素朴な笑顔で「人に喜んでもらうことが大好きなんです」と私に言いました。私も好きなお笑い番組の話で、大いに盛り上がりました。「来年の三者のつどいで一緒にコントを披露できたら良いね」と話しています。将来的には、障がい者も積極的にボランティアとして参加できる「障がい者サポート隊」を一緒につくりたいと思っています。
今年の弥勒山「三者のつどい」の「障がい児者と家族のつどい」で。岸本さん(左から二人目)は運営者の一人として、障がいのある人とその家族の話に耳を傾けた
私の地元では、障がいのある人が自らボランティアに取り組んだり、活躍できるような場がまだ少ないと感じています。障がいのある人の自立のために、三者の仲間の輪を広げて、誰もが「生まれてきて良かった」と思える社会をつくっていけるよう全力を尽くします。
マンション管理員として働く岸本さん。マンションの住民からの声を聞き、専門的な立場からトラブル等の解決にあたる
<社会貢献Tips>
ヘルプマークを知っていますか?
ヘルプマークとは、援助や配慮を必要としている人が、そのことを周囲の人に知らせることができるマークのことです。外見からは分からない病気や障がいをもっている方もいます。ヘルプマークの裏には、その人が必要としている援助や、情報が書かれているので、このマークを見たら席を譲ったり、援助が必要か声をかけるなど、自分のできる範囲で行動をしてみませんか。