社会を学ぶ
社会的養護の児童施設

児童養護施設は、保護者のない児童や保護者に監護させることが適当でない児童に対し、安定した生活環境を整えるとともに、生活指導、学習指導、家庭環境の調整等を行いつつ養育を行い、児童の心身の健やかな成長とその自立を支援する機能をもちます。

児童養護施設では、虐待を受けた子どもは59.5%、何らかの障害を持つ子どもが28.5%と増えていて、専門的なケアの必要性が増しています。

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世の中の問題を他人事にせず、自分にできることから社会に貢献していく。そんな青年を目指すためのコーナー。
今月は、近畿ブロックの「社会を学ぶサロン」(5月30日・Zoom)を取り上げる。今後、近畿ブロックで社会貢献活動を展開していくために、まずは「Myおせっかい推進委員」自身が社会の問題を学ぼうと、委員を対象にオンラインで開催された。
今回のサロンでは、京都府の「社会福祉法人るんびに苑 るんびに学園 綾部子どもの里」の藤大慶理事長を講師に迎え、学園の取り組みや、その思いを伺った。

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「るんびに学園」について

「るんびに学園」は、大阪府茨木市にある西福寺の住職であった藤大慶氏が、さまざまな事情を抱える子どもたちのよりどころとして始めた和太鼓の活動が起源。長年の取り組みを経て、平成15年(2003)、京都府綾部市に「るんびに学園」を開園した。心理的援助と自立支援を行う京都府下唯一の心理療育施設である。定員は30名。

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本気で向き合う気持ちが子どもたちの心を変えていく

森田 (近畿ブロック部長・司会) 本日は藤理事長から様々なお話を伺い、身近で悩み、苦しんでいる人たちのために、私たちに何ができるのかを考えるきっかけにしたいと思います。藤理事長、よろしくお願いいたします。

 こちらこそよろしくお願いいたします。霊友会の皆様には毎年「ありがとうこだま基金」で多大なるご支援をいただき、心からお礼申し上げます。
 40年近く前、シンナー、校内暴力、深夜徘徊……など、子どもたちを取り巻くさまざまな問題が全国に溢れかえっていました。子どもたちが立ち直り、まっすぐに生きていくために私に何かできないか。そんな思いから、「るんびに太鼓」を立ち上げたのです。これなら行き場のない彼らの気持ちを発散でき、寺に足を運んでもらう機会にもなると考えたのです。
 初めは太鼓に興味をもつ子はいませんでしたし、親御さんもそういった場所に子どもを出したがらない。そこで、練習後の美味しいまんじゅうとお茶で子どもたちを誘ったり、地区で朝市を開いて、親御さんにも足を運んでもらう機会をつくりました。
 そうした中で、あるとき、地域の連帯感を深める行事として盆踊りが企画され、そこで子どもたちが和太鼓を披露したのです。割れんばかりの拍手。それまで渋々やっていた彼らの目の色が変わりました。自分の存在を他人から認めてもらったことが嬉しかったんでしょう。それが今の学園設立につながるきっかけでした。

森田 素晴らしい取り組みですね。現在、学園に来られている子どもたちは、どういった子が多いのでしょうか。

 当学園には、さまざまな事情を抱え、京都府の児童相談所(家庭支援センター)から入園を認められた子どもたちがやってきます。小学1年生~中学3年生までを基本とし、発達障がいのある子は高校3年生まで受け入れています。その約8割が虐待を受けた子どもたちです。さらに、その中の約4割は実の母親から。昔のような大家族の家庭は少なく、母親ひとりで子育てをしていると、つい頭に血が上ってしまう。また、親自身、子どもの頃に親から愛情を注いでもらっていないと、子どもへの接し方が分からない。そうした背景があると感じています。

森田 そのような環境で育った子どもたちと、どう接しているのでしょうか。

 親の愛情を受けていない子どもたちは、大人を信用していません。身近な大人が、口では立派なことを言っても、結局は自分に都合のいいことばかりしてきたことを、子どもは見抜いたのです。
 ですから学園の先生や職員に対しても、拒否反応から始まります。「うるせえな」「うざい」「死ねや」なんて罵詈雑言(ばりぞうごん)は日常茶飯事。親身になって関わろうとしても、私たちを困らせたり、わざと試すような行動を取るのです。
 それまで、家庭できちんとした生活をしていない子も多い。ご飯もろくに食べさせてもらえない、お風呂に入れてもらえない、怪我や病気をしても病院に連れて行ってもらえない、といった具合に。手の洗い方から歯の磨き方、お風呂の入り方……一から教えていきます。大変な苦労がありますが、根気よく関わっていくことで、この人は信頼できるんだと、子どもたちの心が変わっていくのです。

森田 育ての親と言っても過言ではな い存在なんですね。ですが、みなさんも人間ですから、腹が立ったり、心が折れそうになることはないんでしょうか。

 傷付くことはたくさんあります。 そのために、先生たちや職員間で連携して、チームプレーで子どもと向き合っています。先輩が相談に乗ったり、「あの子は今こういう気持ちだと思うよ」とお互いに話し合ったり。子どもたちの抱えるトラウマ、心の傷を緩和していくのが心理療育施設の一つの大きな役割であり、児童養護施設との違いでもありますが、そんなに簡単に解決する問題ではありませんからね。日夜、こうかな、ああかなと意見を出し合いながら一生懸命取り組んでくれています。

森田 実際に現場で関わっている方々のお話を聞かせていただき、勉強になることばかりです。子どもたちの保護者の方とは、何か関わりはあるのでしょうか。

 運動会や和太鼓の発表会など、さ まざまな行事に招待しています。家では見たことがない子どもの輝く姿を見ることで、何か感じてもらえるのではないか。気の長いことかもしれませんが、そのような希望をもって取り組んでいます。

森田 保護者の方自身の気持ちや家庭の環境が変わることも大切なのでしょうね。

 そこが今、一番の課題だと感じています。中学校を卒業して、児童相談所が大丈夫だろうと判断すると、保護者のもとに子どもを帰します。しかし、その判断も非常に難しいものがありますからね。なんとかもう少し見守りたい、支えたいというのが本音です。私自身、残りの人生を使って、そういった課題に取り組んでいきたいと思っているんです。

森田 先生方や職員のみなさんが、子どもたちと関わってきて良かったと、一番感じる瞬間はどんなときでしょうか。

 嬉しい瞬間はたくさんありますが、 一番は卒業式ですね。1学期は子どもたちも新しい環境になじめず、教室も荒れる。2学期、運動会や遠足など、いろんな行事を重ねながら少しずつ心を開いてくれる。3学期になると、中3の子は高校受験がありますから、先生たちや職員も必死になって手助けします。自分のために一生懸命になってくれるその思いは、子どもたちにちゃんと伝わる。卒業式は、子どもたちも、先生も職員もボロボロ泣いて、みんなで喜びを分かち合うんです。
 子どもたちのために、という思いで1年間頑張るのですが、泣いている子どもたちの姿から元気をもらい、気付くのです。「自分たちこそ、彼らの存在に支えられていたんだ」と。互いに支え合う大切さを、子どもたちも大人も、1年間を通して実感します。

森田 一度は大人を信用できなくなった子どもたちが、本気で向き合ってくれる人の存在で変わっていくんですね。

 私自身、息子を自分の思い通りに育てようと、両親やまわりの人に口出しをさせまいとして失敗した経験がありました。人間は、いろんな人の影響を受けて成長していくのですから、それを温かく見守ることも大切かなと思います。挨拶をするとか、人を裏切っちゃいけないとか、人として最低限のことは親が教えてあげたほうがいいと思いますが、多くのことを、たくさんの人とのふれ合いの中で学び、成長していくことが重要ですね。

森田 本日は貴重なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。子どもたちを取り巻く社会の問題、また、関わる先生方や職員のみなさんの苦労や喜びを知り、大変勉強になりました。
 私たちももっと社会に目を向け、多くの人の心に寄り添える活動をつくれるよう、頑張ります。

*発言は講演の一部をまとめました。
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参加者の声~サロンを終えて~

私のまわりには子育て中のママが多い。彼女たちをひとりぼっちにしない、そんな活動をつくっていきたいと思った。(30 代・女性)

子どもたちから直接悩み相談を受けられるような場づくりや、そういった活動への支援をしてみたい。(30 代・男性)

以前から興味があるのは「子ども食堂」。調べてみたら、近所でも実施している団体が2つあった。自分たちの地元にどんな団体や活動があるのかを調べて、そこに参加していくのも、自分たちにできることではないか。(50 代・男性)

次回の推進委員会では、自分たちが取り組みたい社会の問題や活動を各自がさらに調べ、意見を交換し、具体的な活動を検討していく。近畿ブロックの今後の展開に注目だ。