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REIYUKAI
ボランティア

2023.5.1

命を大切に
故郷の安全と安心を守りたい

消防団員 鈴木 勝行さん(46

家族に見送られ、青い活動服を着て消防団の活動に出かける鈴木さん。普段は一家の優しい父でもある

 全国の市区町村に設置される消防団は、地域の住民が自治の一端として自らの意志で参加し、消防や防災の重要な役割を担っている。しかし昨今、人々の地域社会への親しみや参画意識が希薄になり、団員数の減少や高齢化の問題を抱えている。

 鈴木勝行さん(46歳)は商業施設管理の仕事をしながら、愛知県名古屋市名東区の藤が丘消防団員として20年以上活動。幼なじみや町の知り合いも消防団に誘い、生まれ育った町の安全を守る仲間の輪を広げている。鈴木さんに、活動における想いをうかがった。

|   消防団の活動を知った突然の事件

 名古屋市の東の玄関口であり、駅前の商店街の賑わいにあふれる藤が丘。ここで鈴木さんは幼なじみと一緒に、近所の人やいつも通う商店街の人たちに見守られながら育ってきた。消防団の活動を知ったのは、高校2年生の時の思いがけない事件だった。

 学校から帰ると、自宅の前に友達のお父さんや電気屋のAさん、顔見知りの商店街の人たちが、「消防団」と書かれた紺色の服を着て集まっていました。不安に駆られながら近づくと、警察の人から声をかけられ、その日、自分の家のガレージから火の手が上がったと知らされたのです。

 幸い、近隣の通報や迅速な消火のおかげで火はすぐに消し止められ、家族は無事。心からほっとして、消火活動を助けてくれた消防団の人たちには、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 鈴木さんは岐阜県内の大学を卒業後、静岡県での勤務を経て、26歳のときに転勤で故郷に戻った。そのとき、電気屋のAさんから消防団に入団しないかと声をかけられた。

 Aさんは副団長を務めていて、若い消防団員がいなくて困っていると話していました。お世話になってきたAさんたちの役に立てるのならと、すぐに消防団への入団を決めたんです。

 私は子どもの頃から、Aさんをはじめとする商店街の人たちに見守られて育ちました。商店街ですれ違えば声をかけてくれたし、私だけでなく、町の子供たちのことにいつも心を配ってくれました。そんな人情深い町のみんなへ、今度は私が恩返しをしよう。そう思ったのです。

 入団した鈴木さんは、消防団の会議や公園での消火訓練に積極的に参加。地域のお祭りやイベントでの警備、防災知識の啓蒙や広報活動にも取り組んだ。こうした鈴木さんたちの活動もあり、藤が丘ではここ20年間、大きな火事は起きていないという。

今年4月2日の第43回藤が丘さくらまつりで、広報活動と警備にあたる鈴木さんたち。賑わう町内を温かく見守る

|   人が安心して暮らせる地域をつくっていきたい

 鈴木さんの祖母のナツエさんは霊友会の支部長だった。いつも多くの会員が集まってくるつどいでは、一人ひとりの悩みを親身に聞いていた。

 そんな祖母や両親から勧められ、鈴木さんは学生の頃から青年部活動や弥勒山セミナーに積極的に参加してきた。

 弥勒山ではいろいろな年代や職業の人と出会い、その時々の思いを語り合えることが楽しかったですね。人前で話すことが苦手だった私も、みんなを引っ張る先輩を見習いながら弥勒山運営に関わる中で、緊張することも少なくなりました。

 こうした経験が、仕事はバラバラで年代も幅広い消防団の活動にもつながっていると感じます。

 36歳のときに2つ上の奈美さんと結婚。長女の美緒さん(10歳)と長男の優誠くん(7歳)に恵まれた。しかし仕事と消防団と霊友会活動で土日もなく、ストレスがたまった時期もあったと言う。

 予定が重なって消防団の訓練に参加できない日が続くと、申し訳なさが募りました。霊友会活動にも身が入らなくなり、どうすればいいのかとモヤモヤしていたんです。

 そんなある日、火災予防の広報活動で車に乗っていると、小学生の男子が私の紺色の制服に目を輝かせて、「頑張ってください!」と声をかけてくれたのです。その純粋な応援に背中を押され、再びやる気と元気が湧いてきました。

 そして、お経をあげていると、祖母や両親、大切な妻と子ども、関わってきた人たちの顔が思い浮かぶんです。93歳で亡くなった祖母は私に、「人生で人が幸せを見つけるのは大変なこと。だから周りの人たちに喜んでもらえることをするんだよ」と言い遺していました。

 先祖に、子どもたちに、胸を張れる生き方をしていきたい。そう思った私は、人を思い、命を大切にする霊友会の教えを生かして、みんなが安心して暮らせる地域をつくっていこうと決心しました。

子ども用の消防服を着て、消防用ホースをしっかりと構える長男の優誠くんと

 今年の第35回「妙一会どんなもんだぃコンクール」で、長女の美緒さんが鈴木さんたちの消防団を取材し、作文部門で金賞を受賞。美緒さんに思いを聞くと、「お買い物やお祭りを楽しんでいる町の人たちを守るために、真剣に活動しているお父さんたちはかっこいいです。私も大きくなったら消防団に入団したい」と話す。

 鈴木さんは照れくさそうに笑顔を浮かべ、こう話した。

 発生の可能性が高まっている南海トラフ地震を始め、いつ、どこで大きな災害や事故に見舞われるか分かりません。それに備えて、私たちは日々訓練に励んでいます。

 自分たちの身を守るためにも、ご近所と交流を深めたり、地域の防災イベントに参加したり、地域の関係づくりを大切にしていただきたいと思います。

 そうすることで、被災して家族とはぐれてしまっても、「○○さんちの子?」と声をかけ合い、助け合える関係につながる。それが少しでも被害を減らし、大切な命を守ることにもなると思います。

2023年名古屋市消防出初式に出席し、藤が丘消防団旗を持つ鈴木さん(左)